(社説)ガザ武力衝突 中東の悲劇繰り返すな
空襲警報におびえる人々。血まみれで救急車に運び込まれる小さな子どもたち。
70年以上にわたり争い続けるイスラエルとパレスチナで、ふたたび武力衝突が起きた。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが数百のロケット弾を発射、これへの報復としてイスラエル軍がガザを空爆している。
双方の市民に多くの死傷者がでており、ガザでは子どもを含む40人以上が死亡した。これ以上の流血は避けねばならない。双方に強く自制を求める。
ガザは佐渡島の半分足らずの広さに約200万人が暮らす。壁で封鎖され移動の自由もなく「天井のない監獄」と呼ばれる。イスラエル軍は武装組織の拠点を狙っていると主張するが、市民の犠牲は避けられない。ハマスも、住民を盾にしているとの疑いが拭えない。
2014年には、空爆と地上侵攻で2千人以上のパレスチナ人が死亡し、大半は一般市民だった。イスラエル側にも70人を超す死者が出た。そんな悲劇を繰り返してはならない。
衝突の背景には、世界から見捨てられているというパレスチナ人の絶望感がある。
米国などが仲介する和平交渉は7年前から止まっている。かつてパレスチナを支援したアラブ諸国も、イランに対抗する戦略を優先してイスラエルとの国交樹立に踏みきり始めた。
中東ではシリア、イエメン、リビアなどで内戦が続き、パレスチナ問題は後景に退いた感がある。だが、過激思想や地域の覇権争いなどの震源となっているこの紛争に、国際社会はあらためて目を向けるときだ。
占領地からイスラエルが撤退し、そこをパレスチナ国家として両者が共存する。この「2国家解決」が国際社会の合意だ。ところがイスラエルは逆に占領地への入植を進め、その人口は60万人を超す。
武力で併合した土地に入植するのは国際法違反であり、イスラエルの責任は重い。今回、東エルサレムに住むパレスチナ人に立ち退きを命じた判決が怒りを呼び、衝突を拡大させた。
米バイデン政権は双方に自制を求めたが、一方で安保理の声明を阻んだのは理解できない。露骨なイスラエル寄りの前政権から方針を変え、パレスチナ難民への支援を再開するなど中東和平に取り組む姿勢を見せていたのではないのか。
バイデン政権は中東で米軍の関与を減らす方針だ。だとしても、地域の安定化を主導する責務は変わらない。米国以上にイスラエルに大きな影響力を持つ国はない。暴力の即時停止に本腰を入れるべきだ。
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