(社説)GDP大幅減 感染収束で本格回復を

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 コロナ禍に襲われた昨年度の実質GDP(国内総生産)の1次速報値は、前年度より4・6%減のマイナス成長だった。家計消費と設備投資が大きく落ち込み、輸出から輸入を差し引いた外需も減少に寄与した。

 年度でみたGDP減少率はリーマン・ショックのあった08年度より大きい。感染抑止のために経済活動を意図的に抑えることが必要とされ、昨年4~6月期、今年1~3月期と緊急事態宣言を余儀なくされるたびに、大きな打撃を受けた。

 ただ、供給が滞って物不足になったり、金融システム不安が起きたりといった「底割れ」的な事態は防げている。財政・金融政策総動員で倒産は抑えられ、失業率の上昇もリーマン・ショック時より小幅だった。

 その裏で広がっているのは、企業や分野による激しい明暗の差だ。投資事業を柱にするソフトバンクグループは世界的な株高を背景に5兆円の利益を計上し、輸出や巣ごもり需要が伸びた製造業の決算も好調だ。対照的に、営業を抑え込まれた交通・飲食産業は打撃が集中する。こうした部門には中小企業や非正規雇用が多く、事態の長期化による重圧は見過ごせない。

 国際的に見れば、コロナ禍の下での日本経済の落ち込みは欧州各国よりは緩やかだったが、中国や台湾、韓国より大きい。21年度の見通しも他国に比べ力強さを欠く。企業や家計の悲観心理を懸念する声もあるうえ、ワクチン接種が想定より遅れるようなことがあれば、経済回復も停滞しかねない。

 4月からの3度目の緊急事態宣言で再び消費が落ち込むのは必至で、経済的にも予断は許されない。ワクチンの着実な接種を含め感染抑止を徹底して初めて、本格的な回復への道を描くことができる。

 逆にいえば、感染の収束が見通せる状況になれば、これまで繰り越されていた分も含めて需要が増え、経済もかなりの程度、自然な回復が見込めるだろう。それでも、企業借り入れの累積などに加え、打撃を受けてきた分野の基盤が傷ついていないか、目配りがいる。部門間の格差を踏まえれば、資金繰り支援や雇用の下支えに関する安全装置の解除は、当面は慎重に進めるべきだろう。

 この間に進んだ生活様式の変化がどの程度定着するかは未知数だ。ただ、世界的にみてもデジタル化や脱炭素化の流れは進むはずであり、官民ともに対応が問われる。日本経済は長年、低い成長率が続き、コロナ禍前も景気後退局面にあった。昨年来の危機から脱しても、課題が山積していることを忘れてはならない。

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