(社説)宣言再延長 難局乗り切る戦略示せ

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 現下の感染状況や医療の逼迫(ひっぱく)を踏まえれば、緊急事態宣言の延長はやむをえない。しかし、展望を欠いた行き当たりばったりにも見える対応からは、社会全体でこの難局を乗り切ろうという機運は生まれない。

 政府はきのう、東京や大阪など9都道府県を対象とした緊急事態宣言を再び延長し、6月20日までとすることを決めた。今回の宣言は、大型連休中の「短期集中」を掲げて始まったが、思うような効果が得られず、20日間ずつ2度、小刻みな延長を重ねることになった。

 東京でみると、今年に入り、緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も出ていなかったのは、1月初めと3月下旬から4月上旬の計30日ほどに過ぎない。ただでさえ、「自粛疲れ」「宣言慣れ」がいわれるなか、時短や休業、外出の自粛などに国民の協力を得るには、より一層丁寧な説明と、事業者への迅速で、きめ細かな支援が不可欠だ。

 映画館や博物館には休業を求め、劇場や遊園地は営業してもよいといった、都独自の線引きは合理性を欠き、関係者の反発を招いた。政府と自治体が意思疎通を緊密にし、混乱を招かないようにする必要がある。

 感染力の強い英国型の変異ウイルスの広がりで、感染が減少に転じるのに、これまで以上に時間がかかることが判明している。感染力がさらに強いとされるインド型への置き換わりも懸念材料だ。解除後にリバウンド(再拡大)が生じないよう、新たな期限までに感染を十分に抑え込める見通しがあるとは、とてもいえない。

 インド型はすでに海外渡航歴のない人からも見つかり、クラスターも発生している。英国型の急拡大を許した轍(てつ)を踏んではならない。限られた資源を、監視や封じ込めに集中させることが急務だ。症状の進行や重症化のしやすさに違いがないかも、注視していかねばならない。

 一方、感染収束の鍵を握るワクチンは、高齢者への接種が本格化している。65歳未満の一般向けの接種券も6月中旬から発送が始まりそうだ。ワクチンの普及具合をにらみながら、流行をどう制御して乗り切るか、科学的な分析を踏まえた明確な戦略を、政府は示すべきだ。

 「開催ありき」で東京五輪に突き進む姿勢が、政府や都のコロナ対応への不信を生んでいることも忘れてはならない。社説はこの夏の開催中止の決断を菅首相に求めた。しかし、首相はゆうべの会見で、公表済みの対策をなぞるばかりで、宣言下でも五輪を開けるかという問いには直接答えなかった。これでは「安全安心の大会」と繰り返されても、到底納得できない。

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