(社説)教員の性暴力 子の被害広げぬために

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 児童生徒らへのわいせつな行為で懲戒免職になった教員が再び教壇に立つのを防ぐ法律が、きのう成立した。自公両党の作業チームが中心となって案をまとめ、野党も賛成した。

 性犯罪は相手の尊厳や自由を傷つける許しがたい行為で、極めて悪質性が高い。教員という優位な立場を利用して、発達途上にある子どもの心身に深い爪痕を残すとなればなおさらだ。また一般に性犯罪は再犯率が高いことでも知られる。

 朝日新聞の社説は、そうした過去のある者を教育現場に戻さないようにする確かな仕組みをつくるべきだと主張してきた。新法の制定を評価したい。

 特徴の一つは「児童生徒性暴力等」という概念を設けたことだ。相手が性行為の同意能力があるとされる13歳以上で、たとえその同意があったとしても、教員による性交やわいせつ行為は性暴力であると位置づけた。同意の有無をめぐって紛糾する事態は基本的になくなり、広く生徒の保護につながる。

 そのうえで「児童生徒性暴力等」が理由で懲戒免職になった者には、教員免許を原則として再交付しないことにした。

 文部科学省も昨年、取得を一律に禁止する法改正を検討したが、「刑を終えて10年で刑は消滅する」とする刑法などとの整合性がとれずに断念した。

 新法は、都道府県の教育委員会が非違行為の内容や改善更生状況を調べ、例外的に復帰を認める道を残すことで、この問題をクリアした。医師免許の取り消しを決める手続きを参考に、第三者でつくる審査会の意見を聴くことを義務づけている。

 児童生徒はもちろん、元教員の将来にも大きな影響が及ぶ判断となる。審査会には、再交付の適否を慎重に見極めることが求められる。その際、教委によって判断が大きくぶれることがあれば混乱を招く。文科省は様々なケースを想定しながら、各教委とともに、審査会の運営方法や判断基準を詰める作業に急ぎ取り組んでもらいたい。

 教員に限らず子どもに関わる仕事に就く人に、性犯罪歴がないことを示す公的証明書の提出を義務づける制度の創設は先送りとなった。課題は多いが、外国の例も研究しながら引き続き議論を深める必要がある。

 新法は一部を除き1年以内に施行される。それを待つまでもなく、子どもが性暴力に遭わない環境を整え、被害者を生まないことが大人たちの責務だ。

 教員と児童生徒を密室で2人きりにさせない。SNSでの私的なやりとりを禁じる。子どもたちの発達段階に応じて性的自由の大切さを教える――など、やるべきことはたくさんある。

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