(社説)武田総務相 改革を阻む言行不一致

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 言行不一致の大臣の下では、不信の払拭(ふっしょく)も組織の立て直しも期待できない。任命権者である菅首相の責任が問われる。

 武田良太総務相のことだ。

 東北新社外資規制違反問題を検証していた第三者委員会が報告書を公表した。

 第三者委は、衛星・地域放送課長だった井幡晃三氏らが17年夏の時点で東北新社から相談を受け、違反の事実を認識した可能性が高いのに、放送法に基づく処分をしなかったと認定。「行政をゆがめたとの指摘を免れない」と結論づけた。

 極めて重い内容である。

 ところが武田総務相は、井幡氏らが東北新社側とのやり取りを「覚えていない」と主張していることを理由に、同氏らを不問に付す考えを表明した。到底納得できる話ではない。

 第三者委に対し、東北新社からは相当量の資料が提出され、その説明も大筋で「相応に具体的」だったとされる。一方、総務省にはあってしかるべき文書類が見当たらず、ヒアリングに多くの担当者が「覚えていない」と答えるばかりで、合理的な反論や反証はされなかった。むしろ、規制違反について担当者と会話を交わした職員がいたことが認められるという。

 総務相はこれまで国会で「第三者委で客観的かつ公正に検証いただく」と繰り返し、追及をかわしてきた。その第三者委が結論を出したのだ。しっかり受け止め、「行政をゆがめた」関係者に厳しく臨むのが、国民に対して責任を負う閣僚の任務ではないか。会見で述べた「深く反省しなければならない」との言葉がむなしく響く。

 当時、東北新社から3万円超の会食接待を受け、2万9千円相当のプロ野球チケットまで受け取った井幡氏は、いまも放送政策課長という要職にある。同課は、外資規制のあり方の見直しを検討する有識者会合の事務局でもある。留任させることが放送行政への信頼をどれだけ傷つけるか。総務相は胸に手を当てて考えるべきだ。

 第三者委の報告とは別に、同省は新たに32人が78件の違法接待を受けていたと発表した。相手先は東北新社とNTTグループが多くを占めるという。

 職員には減給などの処分がされたが、東北新社に勤務する菅首相の長男が果たした役割や、政権の肝いり政策である携帯電話料金の引き下げとの関係などは、十分に解明されていない。

 第三者委の検証は続き、総務相は「万全の協力」を約束する。だが報告書から浮かぶのは「協力」には程遠い実態だ。まず大臣が姿勢を改め、第三者委を支え、見解を尊重することから始めなければならない。