(社説)日韓歴史問題 外交解決の責任果たせ

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 日本による植民地支配下で起きた問題をめぐり、韓国の司法が新たな判断をした。

 元徴用工の遺族らが日本企業に損害賠償を求めた裁判で、ソウルの地裁が7日、原告の訴えを却下した。

 同種の訴訟では3年前、大法院(最高裁)で日本企業に賠償を命じる判決が確定している。

 判断の焦点は、賠償などの請求権が1965年の日韓国交正常化時の協定に含まれるかどうかである。

 大法院は植民地支配そのものが不法と断じ、「慰謝料」の請求権は協定の対象外として原告を勝訴させた。

 これに対し、今回の判決は、賠償請求権は協定に含まれるとし、個人の請求権は消滅していないとしつつも「権利の行使は制限される」と結論づけた。大筋で日本側の政府、企業の主張に沿った内容である。

 4月には、日本政府を相手どった慰安婦問題の訴訟で、原告の訴えが却下された。別の慰安婦訴訟では賠償を命じる判決が確定していたが、正反対の結論が導き出された。

 韓国の司法判断の揺れ動きには分かりにくさも残るが、そこには、かつて意に沿わぬ支配によって文化をも奪った日本への複雑なまなざしが反映されているとみるべきだろう。

 新たな判決に共通しているのは、国際法の流れなどに重点を置き、国交正常化以来の日韓双方の努力や苦心の経緯を評価している点である。

 さらには、機微にふれる歴史問題で被害者の救済を目指すには、司法よりも外交であたるのが望ましいとの勧告も込められている。

 近年の両国関係が示すとおり、司法の判断がどう下されても双方にしこりが残り、和解には至らない。被害の救済と関係の進展を両立させるためには、両国の政治の意思に立脚した外交解決しか道はない。

 韓国政府・与党には、新たな判決に批判的な声がある。

 しかし、司法判断の尊重を主張してきた文在寅(ムンジェイン)政権だけに、大胆な決断の契機とすることも可能なのではないか。

 もし、そんな具体的な動きが芽生えたのなら、加害の歴史に責任を持つ日本政府は、謙虚な姿勢で最大限の協力を惜しむべきではない。

 7日の判決は当初10日に予定されていたが、異例の前倒しとなった。理由は不明だが、11日に英国で始まるG7サミットには日韓両首脳が参加する。

 多国間外交の舞台がもたらす好機を逃してはならない。たとえ短時間でも互いに向き合い、事態を打開する機運を模索する責任が両指導者にある。

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