(社説)骨太方針原案 負担の論議 本格化を

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 「国家観が見えない」との指摘が絶えない菅首相にとって、経済政策のビジョンを示す「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」は、疑問に答える好機のはずだ。だが、おととい公表された菅政権で初の骨太方針の原案でも、首相が掲げる政策を貫く骨格は見えない。

 コロナ後の成長に向け、脱炭素社会、デジタル化、地方創生、少子化対策の4分野を重点に、投資を加速するという。

 いずれも前政権から取り組んできたテーマである。新味が無いのはともかく、残念なのは、重要な論点の多くで明確な方向性を示さなかったことだ。

 例えば、菅首相の肝いりで目標を引き上げた温室効果ガス排出削減への取り組みである。

 二酸化炭素の排出に課金するカーボンプライシング炭素税排出量取引)が焦点になるが、「専門的・技術的な議論を進める」とするにとどめた。「既得権益の打破」が持論のはずなのに、産業界の反対を恐れて尻込みしたのではないか。

 危機的な財政の再建をめぐる記述も踏み込みが甘い。政府は昨年度、3回にわたる巨額補正予算を編成した。追加で発行した約80兆円の国債をどうやって償還するのかについて、原案では考え方すら説明しなかった。

 国と地方の基礎的財政収支を25年度に黒字化する財政健全化目標は堅持した。しかし一方で、年度内に改めて、目標を達成できるか再確認するという。これでは財政再建の議論を先送りしただけだ。

 高齢化は今後本格化する。22年度からは団塊世代が順次75歳になり、医療や介護への公費負担が一段と増していく。さらに脱炭素や少子化対策などの予算を増やしたうえに、その他の歳出や歳入を見直さなければ、国の借金は雪だるま式に膨れあがってしまう。

 コロナ禍は、飲食や宿泊など一部の産業に影響が集中し、非正規社員やひとり親世帯など社会的弱者がしわ寄せを受けてきた。格差是正は喫緊の課題である。政権が重視する4分野で生じる新たな財源の確保にとどまらず、財政を持続可能にするための歳入改革が求められる。

 原案には「応能負担の強化等による再分配機能の向上」や、米国の企業や富裕層への増税案を参考にした「財源の確保」が盛り込まれた。消費税10%後の増税論議を封印した安倍前政権からは一歩前進と言える。

 菅首相は「(人口減社会のなか)負担増の必要性を国民に説明し、理解してもらう」ことが政治信条だという。ならば早急に税制改革論議を始め、秋までにある衆院選の争点として、国民に提示するべきだ。

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