(社説)東芝と株主 経産省は関与の説明を

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 東芝の昨年の株主総会は公正に運営されたものとはいえない――。こう認定する調査報告書が公表された。経済産業省も経営陣と一体となり、株主の提案や議決権行使を不当に妨げようとしたという。事実なら重大な事態だ。指摘に対し経産省と東芝は早急に答える必要がある。

 昨年の東芝の総会では、海外ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントなどが独自に取締役の人事案を出したが、否決された。エフィッシモは今年3月の臨時株主総会で、昨年の総会運営についての調査を担当弁護士を指定して提案。賛成多数で可決された。

 調査報告書が描き出すのは、経産省の担当部局が東芝経営陣と緊密に相談しながら、アクティビスト(物言う株主)の提案実現を阻もうとする構図だ。その際、安全保障の見地から海外投資を規制する外国為替及び外国貿易法外為法)の規定を再三ちらつかせたという。

 経産省がファンド側から得た情報を東芝に漏らすといった「国家公務員法守秘義務に抵触しうる」行為もあったと指摘。他の海外ファンドにも不当な影響を与えたとしている。東芝幹部が当時の菅官房長官に経緯を報告したところ「強引にやれば外為で捕まえられるんだろ?」との発言があったという東芝側の記録にも言及した。

 原発なども手がける東芝は、海外の投資家が株式を取得するには事前届け出が必要と外為法で定めた指定業種のうち、安全保障上特に重要なコア業種に含まれる。これに伴い、関係者の役員への就任や事業の譲渡・廃止などについて、投資家の行動に一定の規制がある。

 ただ、安保が理由であれ、法の規定と適正な手続きに従うことは大前提だ。万一、逸脱や過度の裁量的判断、当局と業界の癒着が許されれば、日本の資本市場への内外の信頼は失われる。重要なはずの当該企業の経営がゆがめば、経済安保の見地からもマイナスだろう。

 調査はエフィッシモ側の提案で行われたが、会社側の提出資料や役員のヒアリング、電子データの解析を経ており、少なくとも部分的には相応の根拠があると見られる。事実はどうだったのか、不適正な行為はなかったといえるのか、東芝はもちろん経産省側にも、明確な根拠をもった説明が求められる。菅首相についても同様だ。

 東芝は、今後の対応について「報告書の内容を慎重に検討の上、後日開示」とし、梶山弘志経産相は会見で「まずは東芝の今後の対応に関する検討を待ちたい」と述べた。よもや、一体となって対応の準備をしているのではないことを願いたい。

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