(社説)経産省と東芝 説明責任を軽視するな

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 安全保障が名目ならば、行政の振る舞いについての説明を軽んじていい――。そう考えているのであれば全くの勘違いだ。

 東芝の昨年の株主総会をめぐり、経営陣と経済産業省が一体となって株主に不当な圧力をかけたと指摘する調査報告書が先週公表された。これに対し、梶山弘志経産相が昨日の会見で、東芝は日本にとって重要な企業であり、経産省の対応は「政策として当然のことを行っているまでだ」と発言した。

 梶山氏は報告書の内容に疑義を示しつつ、個別の論点についてのコメントは控えるとし、経産省として調査する予定もないという。「国家公務員法上の守秘義務に抵触しうる」と指摘された行為についても、一つ一つの行動を確認する必要はないと述べた。

 確かに報告書のすべてが正しいとは限らない。調査は昨年の株主総会で独自の取締役人事案を否決された海外ファンドの提案だった。とはいえ、役員のヒアリング、電子データの解析などを踏まえ、メールなどの具体的な記述も根拠に挙げている。臨時株主総会で実施が決まった会社法に基づく調査でもある。

 東芝の取締役会は、報告書の指摘を真摯(しんし)に受け止め、真因、真相を究明して責任の所在を明確化すると決議した。関係する役員も退任させる。永山治・取締役会議長は、経産省との関係で担当者の企業統治や法令・規範の順守の意識が欠けていたと述べた。

 こうした中で、経産省側が一般論だけで反論しても、説得力は乏しい。少なくとも重要な論点については、相応の根拠を示すべきだ。もし、自ら説明責任を果たせないのであれば、第三者による調査が必要になる。

 懸念すべきは、梶山氏が、安全保障に関しては「企業を運営するにあたっての法律を超えても、関心を持たざるを得ない部分がある」といった発言をしたことだ。守秘義務違反も「国の公の事業に支障があったかどうか」が判断基準になると繰り返した。いずれもあいまいな発言だが、企業統治や民間の利益を軽視する姿勢にもみえる。

 安保のためには、事実は明確にせず、外資にこわもてで臨めばよい。そんな認識で説明を避け続ければ、内外の投資家は日本の資本市場や企業経営の公正さへの疑念を深めるだろう。

 経産省が依拠する改正外為法は「安保上の対応の強化」と「海外からの投資促進」の両立を掲げる。施行直後の今回の案件で内外に不透明さを印象づけたことは、こうした政策目的にかなうのだろうか。再び経営立て直しを迫られる東芝の現状を直視し、考え直すべきだ。

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