(社説)土地規制法 恣意的運用に歯止めを

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 条文の規定があいまいで、恣意(しい)的な運用に懸念が示されていた土地規制法が、先の通常国会の会期末に成立した。慎重審議が求められたが、会期延長を拒む与党は最後、未明の参院本会議で強引に成立させた。多くの疑念にふたをし、数の力で押し切った国会運営は到底許されるものではない。

 政府はこれから、基本方針や政令で細部を定める。プライバシーや思想・良心の自由、財産権などの基本的人権が侵害されることのないよう、明確な歯止めとなるものにしなければならない。国会や国民が不断に点検できるよう、手続きの透明性の確保も不可欠だ。

 この法律で政府は、自衛隊や在日米軍の基地、原発などの周辺や国境近くの離島で土地や建物の利用状況を調べ、施設の機能を阻害する行為に対しては、懲役を含む罰則つきで中止を勧告・命令できるようになる。

 しかし、規制対象となる区域や調査の範囲は、政令に委ねられている部分もあり、時の政権が安全保障を口実に際限なく広げる恐れが否定できない。どんな行為が施設の機能を害すると認定されるのかについても、電波妨害などごく一部が示されただけで、具体像は政府が後から決める基本方針任せだ。

 参院内閣委員会の参考人質疑では、法案に賛成の立場の研究者からも「条文案を読むだけでは、様々な臆測が広がる恐れがあると痛感した」として、国民の不安を払拭(ふっしょく)するための歯止めの必要性が指摘された。政府・与党は重く受け止めるべきだ。

 この法律によって大きな影響を受けそうなのが、米軍基地が集中し、多くの国境離島を抱える沖縄である。

 沖縄弁護士会は「県民のだれもが調査規制対象となってもおかしくない」「県民が知らないうちに監視下におかれるおそれもある」などとして、法案に反対し廃案を求める会長声明を出している。基地を監視したり、抗議したりする住民の活動が、対象とされるようなことは、あってはならない。

 衆参両院の内閣委員会は、法案の可決に際し、政府に注文をつける付帯決議を行った。参院では、対象区域の指定に先立って自治体の意見を聴く、機能阻害行為について「明確かつ具体的に」基本方針に定める、目的外の情報収集は行わない、など17項目をあげた。

 本来なら、法案を修正し、盛り込んでおくべき事項である。決議に法的拘束力はないが、政府は真摯(しんし)に受け止め、実行せねばならない。法案を通した国会の責任も重い。政府に徹底した情報開示を求め、その運用を厳しくチェックする必要がある。