(社説)赤木ファイル 佐川氏は真相を語る時

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 公文書改ざんという民主主義の根幹を揺るがす行為に、財務省はなぜ手を染めたのか。担当部局以外の幹部や首相官邸は、本当に何も知らなかったのか。改めて突きつけられた疑念を晴らすには、佐川宣寿(のぶひさ)元理財局長ら関係者が、公の場で真相を語ることが不可欠だ。

 遺族の求めから1年、財務省がようやく「赤木ファイル」の開示に応じた。改ざんに加担させられたことを苦に自死した元近畿財務局職員、赤木俊夫さんが経緯を記録した文書である。

 理財局との間でかわされたメールからは、繰り返し削除や修正を求められた理不尽や、赤木さんを含む財務局職員が抵抗しつつも従うほかなかった無念さがにじむ。3年前の財務省の報告書にはなかった生々しさが、問題の異様さを際立たせる。

 報告書は、佐川氏が「改ざんの方向性を決定づけた」と結論づけたが、指示については認めていない。一方、ファイルにあった理財局職員のメールには、局長から「直接指示があった」と記されていた。誰が誰にどんな指示を出したのか。解明は不十分なままであり、決着済みとして再調査を拒み続ける安倍、菅政権に理はない。

 問題の根底にあるのは、森友学園への国有地の不透明な値引き売却だ。安倍首相が国会で「私や妻が関係していたら、首相も国会議員も辞める」と発言。その後、佐川氏が「森友学園との交渉記録は廃棄した」と虚偽答弁をした2日後に、安倍氏の妻で、学園が開設予定の小学校の名誉校長だった昭恵氏に関する記載などの削除を求めるメールを理財局が送っていた。

 佐川氏は何に配慮し、改ざんへと向かったのか。18年3月の国会での証人喚問では、刑事訴追の恐れがあることを理由に大半の証言を拒んだ。しかし、捜査が終結し、不起訴となった今、経緯をつまびらかにすることに何ら支障はないはずだ。

 まずは、俊夫さんの妻雅子さんが国や佐川氏に損害賠償を求めた裁判である。雅子さん側は、改ざんの全体像を明らかにするため、ファイルの黒塗り部分の開示を求め、関係者の法廷での証言も視野に入れる。裁判所は真摯(しんし)に向き合ってほしい。

 そして国会である。国民の代表からなる国権の最高機関が、虚偽答弁や改ざん文書でだまされていたという由々しき事態である。行政監視の使命を果たすためには、閉会中審査に佐川氏らを招致し、徹底して事実関係をただす必要がある。

 ファイルの開示について、雅子さん側は「第一歩がようやく進む」と語った。真相解明はまだこれからであり、その歩みを止めるわけにはいかない。

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