(社説)東芝の蹉跌 「敗北」の根源直視せよ

[PR]

 東芝の株主総会で、取締役会議長の永山治氏の再任が否決された。過半の株主が、東芝の経営に「ノー」を突きつけた。日本の企業経営と産業政策の信用を根底から揺るがす問題として、この「敗北」の実相と真因を見極める必要がある。

 総会では、昨年の総会をめぐり東芝の経営陣と経済産業省が一体となって、株主の権利行使を妨げたとの調査結果が報告された。取締役候補のうち、永山氏と、監査委員だった小林伸行氏の再任が否決された。

 議決権行使助言会社も再任反対を推奨した。「アクティビスト(物言う株主)」と呼ばれる一部海外ファンドとの対決という次元を超え、株主の不信があらわになったといえる。企業統治のルールが下した結果であり、その意味は極めて重い。

 東芝がここに至った背景には、3重の蹉跌(さてつ)がある。

 第一は、東芝自体の経営の失敗だ。2015年に会計不正が発覚し、歴代3社長が辞任。16年末に米国原発事業で巨額損失が露見し、債務超過に転落する。半導体事業の売却を余儀なくされ、企業規模は半減した。

 第二に、日本の経済界の力量の限界も露呈した。東芝自体が経団連会長を輩出した名門であるが、17年以降、経済同友会代表幹事を務めた小林喜光氏が、昨年まで取締役会議長の任にあった。永山氏も中外製薬CEOやソニーの取締役会議長を歴任し、経営のプロとされる。監査委員長だった太田順司氏は新日本製鉄出身で、監査役協会会長や証券業協会の自主規制会議議長の経験がある。

 企業統治や資本市場のルールを熟知し、あり方を主導してきたはずの人たちが監視役に顔を並べながらの、この惨状だ。

 第三は、「官」の関与だ。経産省は06年に原子力立国計画を打ち出し、原子力産業の国際展開支援も掲げた。同時期に東芝は米国の原発企業を買収、後の巨額損失に至る。穴埋めの資金の出し手が国内で見つからず、東芝はアクティビストなどに出資を仰いだ。その意向を無視できないのは、市場の理である。

 だが、「株主への圧力」を指摘された後、梶山弘志経産相は東芝について「多くの事業を安定的に継続するために政府支援を実施してきた、日本にとって重要な企業」と述べ、関与は当然という以上の説明を拒んだ。官の振る舞いも法令順守や手続きの適正さが必須であるし、政策的関与というなら、その「結果」も当然問われる。

 蓄積された技術と現場の奮闘、消費者の信頼――。市場のルールの下で貴重な資源を生かすには何をなすべきだったのか。虚心に反省すべきときだ。

連載社説

この連載の一覧を見る