(社説)基地騒音判決 地域の声を受け止めよ

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 宮崎県航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地の周辺住民ら約180人が騒音被害に対する損害賠償などを求めた裁判で、宮崎地裁はおととい、総額1億1300万円の支払いを国に命じた。

 判決は、基地の公共性を踏まえても「被害は直ちに正当化できるものではない」「住宅防音工事なども限定的な意義しかない」と述べ、騒音は我慢の限界を超えると指摘した。国は重く受け止めねばならない。

 一方で、原告らが「一番の願い」とした夜間などの飛行差し止めは退けた。過去に地裁や高裁で認められた例はあったが、16年に最高裁が自衛隊機の運航は防衛相の広い裁量の範囲内にあるとして覆し、これが今回も壁となった。将来にわたる賠償金の支払いも同様だ。

 騒音の根源に迫らず、過去分の被害のみ救済し、時が経ってまた提訴があれば、その期間の分だけ賠償させる。こんなことの繰り返しでいいのだろうか。

 国相手に裁判を起こし、続けていく労苦や手間は並大抵のものではない。前例踏襲に逃げ込むだけでは、人権のとりでたる司法の役割を果たすことはできないと知るべきだ。

 今回の訴訟の特徴の一つは、基地と「共存」してきた地域で起こされた点にある。

 新田原基地のある新富町(しんとみちょう)は人口約1万6千人。その3割は隊員や家族、取引業者など自衛隊の業務と関係がある人たちで、基地の重要性も広く認識されている。そうした土地で、防衛政策への不信や将来の生活への不安が高まっていることに、国はしっかり向き合う必要がある。

 背景はさまざまだ。

 飛行回数の減少などを理由に、国は16年に騒音補償区域の縮小を提案。結局断念したものの、強い反発を呼んだ。

 また、米軍普天間飛行場の移設にからみ、米軍が緊急時に使う弾薬庫などの整備が基地内で進められているが、地元への説明が不十分だった。最近は、自衛隊が導入する最新鋭ステルス戦闘機F35Bの配備先の「有力な候補地」ともいわれ、さらなる騒音被害への懸念が広がる。

 中国や北朝鮮の情勢をにらんで、国は九州や南西諸島での自衛隊基地の整備・強化を進めている。新田原の不安は決して新田原だけの不安ではない。

 防衛省は全国の地元対策を担う部局を改編し、7月から運用を始める。これを懐柔や威圧のための組織にしてはならない。

 繰り返し指摘してきたように、米軍基地も自衛隊基地も、周辺住民の理解と協力がなければ安定した運用はできない。地域の負担軽減に向けて、地域の声に誠実に耳を傾ける。この原点に立って事を進めるべきだ。

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