(社説)殺人AI兵器 実効ある規制が急務だ

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 殺すことへのためらいも、殺される恐怖心も持たない人工知能(AI)が、人間の判断を介さずに人の命を奪う。そんな兵器が登場する前に、人類の英知を発揮して規制をすべきだ。

 北アフリカのリビアの内戦で、軍用の無人小型機(ドローン)が、人間の制御を離れて標的を攻撃した可能性があると、国連安全保障理事会の専門家パネルの報告書が指摘した。

 AIなどを用いて、人間の関与なしに敵を殺傷する兵器を、自律型致死兵器システム(LAWS)という。戦争の様相を一変させるものとして、火薬、核兵器に続く「第3の軍事革命」と呼ばれ、米国、中国、ロシアなどが開発中とされる。技術的にはすでに可能な段階ともいわれるが、実戦で使われたとしたら世界初の報告例となる。

 殺人ロボットとも称されるこの兵器については、感情や体調にとらわれないからこそ、敵の識別や攻撃が正確になり、非戦闘員の被害軽減につながるという主張もある。しかし、味方の人的犠牲を回避でき、兵士に人を殺す精神的負担を負わさずに済むとなれば、戦争へのハードルが下がるのは確かだろう。AIによる判断の誤りや誤作動、暴走の危険も否定できない。

 兵器が完成し、配備が進んでから規制をかけるのは極めて困難だ。リビアのケースは、死傷者の有無をはじめ詳細が不明で、実際にLAWSに該当するのかどうかはわからない。しかし、軍事技術の急速な進展を踏まえれば、法的拘束力のある規制に向けた国際的な合意形成を急ぐ必要がある。

 非人道的な特定の通常兵器の使用を禁止・制限する条約の枠組みの下、4年前に本格的な議論を始めた専門家会合は一昨年、報告書をまとめたが、その後は、新型コロナの世界的流行もあって、話し合いはほとんど進んでいない。

 報告書には、LAWSの行為にも国際人道法が適用され、その使用には人間が責任を負うという共通認識が盛り込まれた。しかし、肝心の法規制をめぐっては、中南米やアフリカ諸国など禁止条約を求める国と、それに反対する米ロなど開発国が対立したままだ。何をもって人間が「関与」したとするかなど、まずは積み残された多くの論点をめぐる議論を深めることで、少しでも溝を埋め、実効性のある規制につなげるべきだ。

 日本政府は、自らはLAWS開発の意図はないと表明しているものの、条約づくりには後ろ向きである。確かに開発国を巻き込むのは容易な道ではないが、禁止の旗を高く掲げ、国際社会の新しいルールづくりに、建設的な役割を果たすべきだ。

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