(社説)ワクチン供給 在庫精査し混乱解消を

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 新型コロナワクチンの接種の新規予約を停止する自治体が相次いでいる。1人につき2回分のワクチンを確保することが基本なのに、政府からの供給が見通せなくなったためだ。予約済みの住民に急きょ取り消しの連絡をしている例もある。

 首長らが憤り、政府の不手際を批判するのは当然だ。ワクチンの全国の在庫状況や今後の調達具合を精査し、偏りがあれば調整するなどして、混乱を最小限にとどめる必要がある。

 政府が先週示した今月後半の配送計画によると、供給できるファイザー製ワクチンは自治体が希望する量の約3割にとどまる。きのう8、9月分の供給の方針を示したが、総量は7月とほぼ同じで、自治体の懸念を解消するものとはいえない。

 配送済みのうち実際に接種されたのは半分程度のため、手元に在庫を抱えている市町村も少なからずあるとみられる。

 だが全国の自治体は、「7月末までに高齢者接種を終える」「1日100万回接種」という菅首相の発言で計画の修正を迫られ、そのための体制づくりに奔走してきた。それが今になって「供給量に合わせた接種スピードの最適化を」(河野太郎行政改革相)と言われて、納得できるはずがない。

 先月下旬には、モデルナ製を使う企業や団体、大学での職域接種の新規受け付けが、申請開始からわずか2週間ほどで停止された。都道府県などが実施する大規模接種も同様だ。

 せっついた揚げ句にハシゴを外す。政府の迷走のあおりを食うのは国民だ。

 いずれのケースも、供給できる量や在庫状況を見極めぬままアクセルを踏み込み、うまくいかないと見るや慌ててブレーキをかけたという話ではないか。現場に無用の負担を強いて疲弊させ、意欲をそぎ、結果としてワクチンの普及が遅れてしまっては元も子もない。

 「大勢の人に、早く」という方針の下で、基礎疾患のある人や高齢者施設の従事者など、本来急ぐべき人々への投与が後回しになっていないか。そんな観点からの点検も求められる。

 公平性や優先順位が改めて問われるなか、五輪のボランティアへの接種が進むことに釈然としない人もいるだろう。ファイザーが五輪用に提供した枠に加え、もとは政府が確保していたモデルナ製も充てられる。

 大会に協力する人たちの健康を考えれば、もちろん接種した方がいい。しかし2回目の注射は7月下旬以降で、皆が免疫を獲得できるころには閉幕している。「安心安全」の底の浅さを見せつけられたようで、不信の種がまたひとつ増えた。

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