(社説)政府予算編成 補正の乱用に歯止めを

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 当初予算という「玄関」だけを繕って、補正予算という「勝手口」は散らかし放題。それで財政を健全化できるはずがない。政府の予算編成である。

 来年度当初予算の概算要求基準がこのほど閣議で了解された。脱炭素化、デジタル化、地方創生、少子化の四つを重点分野に設定。各省庁は既存の経費の要求を1割削減すれば、その削減分の3倍の金額をこの4分野で要求できる。

 コロナ禍を機に、社会経済は変わりつつある。新たな政策に積極的に取り組む必要はあるだろう。一方で財政の状況は危機的だ。優先順位が下がった事業は抜本的に見直し、財源を捻出することが欠かせない。

 団塊世代が75歳以上になり始める来年度は、社会保障費の伸びが加速する。できるだけ抑えるよう、診療報酬改定や後発医薬品の使用促進などを進めることが求められる。

 もっとも、当初予算については骨太の方針で、社会保障費は高齢化による増加の範囲内に、社会保障以外の一般歳出は前年度とほぼ同額に抑えるという目安が決まっている。当初では、この目安を守り、財政規律を重視しているかのように装うのが恒例だ。

 問題は、「抜け道」として乱用されてきた補正予算を縛るルールが無いことである。

 「(補正は)30兆円に近いものを考えていかなければならない」。来年度予算の概算要求基準を閣議了解した翌日、自民党二階俊博幹事長からは早くもこんな発言が飛び出した。

 コロナ禍の長期化で、補正の編成は政治の課題ではあろう。医療機関や飲食店、非正規労働者らを支援する予算は、十分に確保しなければならない。だが金額を決めるのは、必要な政策を積み上げてからのはずだ。

 そもそも財政法は、補正の目的を、災害など想定外の事態に対応することに限定している。ところが実際には、国土強靱(きょうじん)化やTPP対策など同じ政策のための費用が毎年計上されてきた。景気対策を名目に規模は兆円単位に膨らみ、中身も精査されているとは言い難い。

 日本銀行によると、消費控えで昨年1年間に、約20兆円が半ば強制的に貯蓄に回った。コロナ禍が落ち着けば、消費はおのずと回復するだろう。仮に需要喚起策をとるにしても、規模は慎重に見極めるべきだ。

 昨年度の税収は、輸出産業の回復などで想定より約5・7兆円上ぶれした。これに浮かれている場合ではない。昨年度は100兆円を超える新規国債を発行した。選挙対策を念頭に浪費する余裕などないことを、政権と与党は心する必要がある。

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