(社説)日韓会談見送り 対話の流れ強め打開を

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 東京五輪の開会式に合わせた韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の来日が、見送られた。菅首相との会談に向けた事前協議で折り合いがつかず、時間切れになった。

 世界的な行事の開幕に隣国の首脳がかけつけ、友好の意思を確かめ合う。そんな最低限の善隣外交すらできないのが、日韓の現状である。

 両政府が口をそろえる「未来志向」を語るには、いま責任を持つ政治指導者が道を切り開くしかない。両首脳は一日も早く関係を正常化する努力を惜しんではならない。

 1泊2日の訪問日程は早くに固まったものの、その後の協議の結果、韓国側が「会談の成果とするには不十分」と判断し、訪日の見送りを決めた。

 韓国側は、日本が2年前に始めた韓国への輸出規制強化の撤回を求めた。代わりに軍事情報の交換と保護をめぐる協定の扱いを絡めようとしたが、日本側は歴史問題の解決が先決だとして取り合わなかったという。

 文氏は今年に入って、対日関係の改善を訴えている。6月のG7サミットに続き、今回も首脳会談に意欲をみせていた。

 大統領の残り任期が10カ月を切り、このまま対日関係を放置すれば「負の遺産」を残すとの焦りがあるようだ。

 だが、根本的な問題の打開に必要なのは、具体的な行動である。最大障壁となっている徴用工慰安婦問題をめぐる韓国の司法判断に、行政府として対処する政治判断を示すべきだ。

 一方で、対韓関係のみならず、朝鮮半島政策全般に意欲を感じさせない菅首相の態度も、どうしたことか。

 韓国との間で特定の問題があるにせよ、近隣の国際環境を把握し、外交策を練るうえで会談の機会を生かすのは首相として当然の責務だ。だが、そうした問題意識すら見えてこない。

 この間に、在韓日本大使館の公使が韓国側を揶揄(やゆ)したような不適切発言をした。外交官としてあるまじき言動は非難されるべきだが、そうした官僚の空気を首相はじめ政治の側が助長しているのではないか。

 韓国大統領府の高官は、今回の協議では歴史問題などについて「理解の接近があった」と述べた。ならば、その機運を生かし、外相会談などさまざまなレベルで協議を継続し、懸案を克服すべきだ。

 きのうは日米韓の4年ぶりの外務次官級会合が、東京で開かれた。北朝鮮への対応や中国問題、台湾海峡情勢などについて意見交換したという。

 東アジアで切迫する懸案の多くを、日韓は共有している。両国首脳は大局を見すえ、不毛な対立から脱するべきだ。

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