(社説)財政再建目標 虚構の議論を改めよ

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 コロナ禍で絶望視された財政健全化目標の達成の可能性が、計算上は残ったようにみえる。しかし、とても現実的とは思えない。政府がこのほど公表した中長期の財政試算だ。

 昨年度の国の税収は、想定より企業業績が堅調だったことなどから、昨年末の見通しから5・7兆円も上ぶれした。これで、政府が掲げる「2025年度の国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化」を実現できるのかが、今回のポイントだ。

 試算では、黒字化の時期が、1月の前回試算より2年早い27年度に前倒しされた。25年度には2・9兆円の赤字が残るが、これまでと同様の歳出削減の取り組みを続ければ、25年度に黒字化できるという。

 額面通りには受け取れない。試算は25年度までの平均で3・3%の名目経済成長率を前提にしている。しかし直近の四半世紀で、名目3%超の成長をした年は1回だけで、平均は0・2%にとどまる。しかも人口が減少に転じて久しい。想定が非現実的であることは明らかだ。

 政府は5年間の名目成長率が平均2・2%の場合でも試算している。こちらは歳出削減努力を続けても、25年度までに黒字化はできない。

 中長期的な財政の先行きを見通し、政府に必要な対応を促すことが、試算の目的ではないのか。願望のような甘い前提で計算しても、厳しい現実を覆い隠して歳出歳入両面の改革を怠る口実を、政府に与えるだけだ。

 基礎的財政収支を黒字化する目標は、小泉政権が02年に掲げた。当時は「10年代初頭」に達成するはずだったが、2度の消費増税を経たいまでも実現できていない。これ以上、虚構の議論を続けるべきではない。黒字化の目標を掲げるのなら、現実的な想定の下で検証し直す必要がある。

 従来の試算は、補正予算を前提としていない。だが実際には、政府は毎年のように大型補正を組み、目玉政策を盛り込んできた。予算編成のあり方を見直したうえで規律を論じなければ、財政は健全化できない。

 菅首相が重視する脱炭素や少子化対策などはもちろん、毎年のように補正に計上されている国土強靱(きょうじん)化などの経費も、必要と考えるのであれば当初予算に盛り込む。そのうえで政策の優先順位を見直し、必要性が薄れた予算は削り、財源を確保しなければならない。

 それでも足りなければ、増税が検討課題となろう。コロナ禍で拡大した格差の是正のため、金融所得や高収益企業への課税強化をまず考えるべきだ。こうした議論に資する財政試算こそ、政府には求められる。

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