(社説)政治家の世襲 政党は制限の検討を

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 衆院選が近づき、ベテラン議員の引退表明が相次いでいる。見過ごせないのが、親族に地盤を引き継ぐ世襲が目立つことだ。新しい人材への門戸を狭め、既得権益の温存にもつながりかねない。政治の活力を失わせる世襲の制限に、各党は真剣に取り組むべきだ。

 通常国会が6月に終わると、自民党塩崎恭久官房長官(愛媛1区)、山口泰明・党選挙対策委員長(埼玉10区)、川崎二郎元厚生労働相(三重2区、比例東海復活当選)が次々と、引退の意向を明らかにした。後継者はいずれも、長男や次男だ。塩崎氏は自身が2世、川崎氏は3世であり、あたかも家業のようではないか。

 もちろん、世襲候補であることと、政治家の資質は別問題であるし、有権者の支持がなければ当選はできない。だが、「地盤、看板(知名度)、カバン(資金)」を最初から持つ2世、3世が優遇されれば、多様な人材の政治への参画が阻まれる。社会の変化に対応する政治の力を弱めることにもなる。

 かつて、政党自身が世襲の禁止を打ち出したことがある。民主党に政権が交代した09年総選挙の時だ。民主党はマニフェストに、現職の国会議員の配偶者と3親等内の親族が、同一選挙区から連続して立候補することを党のルールとして認めないと明記した。これに対抗する形で、自民党も同様の対象を「次回の総選挙から公認、推薦しない」と公約したのだ。

 自民党内で旗を振ったのが、当時は選挙対策副委員長だった菅首相である。「候補者は幅広く、多彩な人材を登用するのが基本だ」「特定の人や団体のための党になり、国民目線から少しずれ始めている。党の体質を改善させる一つが世襲の問題だ」。自身がたたきあげで、郷里秋田から離れた横浜を選挙区に選んだ菅氏ならではだった。

 しかし、こうした動きは、自民党の政権復帰を経て、雲散霧消した。前回17年衆院選で、自民党の当選者のうち世襲は83人で全体の29%。そして今、以前は世襲批判の急先鋒(きゅうせんぽう)だった菅氏の内閣に、麻生太郎副総理兼財務相、河野太郎行政改革相、小泉進次郎環境相ら多くの世襲議員が名を連ねる。民主党の流れをくむ立憲民主党も、荒井聡元国家戦略相(北海道3区)の後継に長男を擁立する。

 各党には、かつての議論を思い起こし、今度こそ本気で世襲制限を検討してほしい。形だけの公募を抜け道にしてはいけない。同一選挙区から立候補を望む者がいるなら、予備選を行うのも一案だ。党員に限らず、一般の有権者に投票を認めてもいい。政党の知恵が試される。

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