(10代の君へ)「まとも」って狭い道だよ 佐藤慧さん

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 中1で不登校になりました。友だちはいたし、「なぜ学校に行かないんだ」と父に言われても理由がわからない。ある日、担任が家庭訪問で母に「うちの学校に登校拒否がいると言われるので病気ということにして」と言うのが聞こえ、「もう絶対に行くものか」と思いました。

 高校に入らずカー用品店でバイトをしていた時。やんちゃな先輩らが「高校くらい出ておきな」と言った。みんな高校中退を悔やんでいた。大人から言われても響かなかった言葉を身近に感じ、1年遅れて通信制高校に進みました。

 好きだった音楽を理解してくれる仲間はいたし、赤く染めた髪を「かっこいい」とほめてくれた先生もいた。「まともに生きていけない」と思っている子には、「まとも」ってすごく狭い道なんだよって伝えたい。

 高校で二つの大きな出来事がありました。一つは姉が19歳で自殺したことです。姉の死で「楽しい日々も、いつかは終わる」と思い始めた。もう一つは2001年に起きた米国同時多発テロ自爆テロと姉の死は同質の死なのか。なぜ人はいずれ死ぬのに殺し合うのか。そんなことを考えていた頃、姉が取り寄せていた入学案内を見て、大阪芸術大の音楽学科に進みました。姉は絵が好きで芸術分野へ進みたいと言っていたんです。

 03年にイラク戦争が始まると、自分の作った曲に込めたかった「希望、平和、愛」という言葉をうまく表現できていないと気づいた。世界を知ろうと大学を中退し、渡米。米国のNGOからアフリカの地域開発事業に派遣された。そこで暮らしながらいまの仕事を始めました。

 未知の世界に飛び込み、自分の知らない自分に出会った。「死」も未知の世界です。僕は震災の津波で母を亡くし、父を病気で亡くした。同じように苦しむ若い人には「悲しみは大切にしていい」と言いたい。悲しみと長く向き合うと、たくさんの感謝、「頂いたもの」の方がいつの間にか多くなっていると気づくんです。(聞き手・宮崎亮

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 さとう・けい フォトジャーナリスト 1982年、岩手県生まれ。NPO法人「Dialogue for People」代表。紛争や貧困、災害を取材。「しあわせの牛乳」で児童文芸ノンフィクション文学賞。近著に「毎日がつまらない君へ」

連載10代の君へ

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