(社説)日ロ経済活動 甘い交渉が招いた帰結

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 北方領土で日本とロシアが経済協力を進める。それは確かに首脳間の約束だった。

 しかし、今回の動きに前向きな雰囲気は感じられない。むしろ、第三国を参入させる道をちらつかせ、日本を揺さぶってきたとみるべきだ。

 ロシアのミシュスチン首相が北方四島で最大の択捉島を訪れた。四島に投資を呼び込むために、外国企業などへの関税や各種税金を大幅に減免する案を示し、「西側諸国や日本に興味深い提案となる」と述べた。

 四島での共同経済活動については、プーチン大統領が2016年に来日した際に当時の安倍首相と合意したものの、実現のメドが立っていない。

 だが、ミシュスチン首相の今回の発言を聞く限り、5年近く滞る日本との交渉に突破口を開くものとは評価できない。

 日本側はかねて、四島は本来自国領という立場から、日本企業や日本人へのロシアの法律適用を避ける「特別な制度」を求めてきた。その点で、首相の今回の提案は「ロシア法の下で行うべきだ」という従来の主張から一歩も出ていない。

 日本以外の国を歓迎する考えを示したことも、あくまで自国だけを対象とした協力の枠組みを求めてきた日本の主張と相いれない。これでは、第三国企業の参入が進み、日本だけが取り残される事態もありえる。

 今回の首相の訪問は、9月の下院選をにらんで、経済的に立ち遅れる極東にてこ入れするのが主眼だろう。その機を利用して、ロシアの条件をのむよう日本に迫る意図も感じられる。

 日本外務省は今回の北方領土訪問を「日ロ関係に資するものでは到底ない」と非難した。ロシア側はこれに反発し、両国関係はかえってとげとげしくなっている。

 安倍氏は16年のプーチン氏との会談後、共同経済活動について「国際的にもほとんど前例のない取り組み」「大統領も強い賛意を示してくれた」と、成果を誇っていた。だが現状は、こうした認識が根拠に欠ける楽観的な思い込みに過ぎなかったことを示している。

 実はロシア側は「合意」の当初から、活動にはロシア法が適用されるという考えを示していた。そうした日本にとって不都合な事実には目をつむり、国民向けに進展を演出してきたのが実態だろう。

 プーチン氏の厚意をあてに展望のない交渉にのめり込んで頓挫を余儀なくされた経緯は、2島返還での決着をめざした北方領土交渉も同様だ。

 前政権の失敗を認めて、対ロ外交を立て直すことが、菅政権に課せられた責務である。