(社説)皇族数の確保 国民の理解が欠かせぬ

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 皇位継承のあり方を議論している政府の有識者会議が先月、「今後の整理の方向性」をまとめた。浮かび上がるのは、国の制度を特定の一家が担うことの難しさであり、にもかかわらずこの10年近く議論を封印し、課題の解決に取り組んでこなかった政治の無責任ぶりだ。

 会議は、女性・女系天皇を認めるか否かの見解を示さないまま、皇族数の確保を喫緊の課題と位置づけ、その方策として、

 (1)女性皇族が結婚後も身分を保持することを可能にする

 (2)戦後改革で皇籍を離脱した旧宮家の男系男子が養子縁組で皇族となることを可能にする

 (3)それでも十分な数を確保できない場合は、旧宮家の男系男子を法律で直接皇族とする

――の3案を示した。それぞれの長短についてさらに検討して報告書をまとめるという。

 秋篠宮さま、悠仁さまという継承の流れを変えないことや、皇族の数を一定程度維持する必要があるという考えは、社説の主張と一致する。

 だが(3)案は旧宮家の復活に他ならない。600年前に天皇家から分かれ、戦後は民間人として暮らしてきた人々をいきなり皇族とするのは国民意識から遊離し、これまでの皇室のあり方にも反する。会議の聞き取りに臨んだ複数の憲法学者からは、門地による差別を禁じた憲法に違反するとの指摘も出た。

 (2)案も同じ問題をはらむ。養子になる本人、実親、養親となる皇族に縁組を強制するようなことはあってはならないが、一方で、天皇の地位に就くこと、退くことのいずれにも自由意思を認めない現行制度と、どう整合させるかなどの課題がある。

 こうした案の背景には「皇位は未来永劫(えいごう)にわたり男系男子で継承しなければならない」との考えがある。これでは悠仁さまのお相手を含め、皇室は男子出生の呪縛から解放されない。

 伝統は尊重すべきだが、人権に反し、憲法に抵触しかねないことまでして固執する伝統とは何か。現在及び将来の国民のどれほどの支持を得られるか。よくよく考えねばならない。

 一番受け入れやすい(1)案にしても、本人の意思をないがしろにして進められる話ではない。

 皇室に生まれた女性は「結婚したら民間人になる」という決まりの下で育ち、人生設計をしてきた。皇族方の年齢も考慮して民主党政権が12年秋、(1)案とも重なる「女性宮家」構想を打ち出した。だが安倍・菅政権は議論から逃げ続け、皇室の危機を一層深刻化させた。

 主権者国民の理解と支持なしに象徴天皇制は存立し得ない。政府、国会はその認識を新たにしてこの問題に臨むべきだ。

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