(社説)温暖化報告書 行動すれば希望はある

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 事態は深刻さを増していることが明確になった。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、地球温暖化の科学的根拠を示した報告書を公表した。世界の人々の暮らしを少しでも脅かさぬよう、温室効果ガスの削減を着実に実現しなければならない。

 来年秋に公表予定の第6次統合報告書に向けて作業部会がまとめた。IPCCの報告書は、前回2014年の第5次が温暖化対策の世界ルール「パリ協定」採択につながったように、国際的な交渉や政策作りに重要な意味を持つ。13年以来、8年ぶりとなった作業部会の報告書は、温暖化に関する1万4千本以上の科学論文を評価した。

 温暖化が人間の影響であることは「疑う余地がない」と、表現を強めて断言。産業革命前からの気温上昇が40年までに1・5度に達するとの見通しも示した。気象への影響は、確実性にばらつきがあるものの、熱波が起こりやすくなり、農業や生態系に影響する干ばつも増え、豪雨も増えるという。氷河の消失や海面上昇は、長ければ数千年続くとも予測した。

 突きつけられた将来像は深刻だが、希望はある。

 今後、多くの化石燃料を使い続けると、今世紀末までに気温は4・4度上昇する。しかし50年ごろまでに温室効果ガス排出を実質ゼロにし、植林や回収で大気中の二酸化炭素を減らせば、上昇幅は一時的に1・5度を超えても、今世紀末に1・4度に戻る可能性があることも示された。

 パリ協定では、産業革命前からの気温上昇を2度よりかなり低く、できれば島国などへの影響を最小限にできる1・5度に抑える努力目標を掲げている。日本も昨年、菅首相が50年に排出を実質ゼロにすると表明。目標は法律に明記された。

 地球を相手にした予測は実証しきれないが、世界の科学的知見が結集された報告書であることを尊重し、政策決定や企業活動、個人の生活でも、温室効果ガスの削減を念頭に置いて動く必要がある。長い道のりで、いま行動を一歩ずつでも進めなければ、予測が正しい場合に取り返しがつかなくなる。

 仮に目標を完全に達成できなくても、可能な限り温暖化を抑えれば、人間社会への悪影響を減らすことはできる。

 すでに多くの先進国で、政府も企業も温暖化対策を前提に、政策やビジネスを組み立てており、遅れれば国際競争力にも影響を及ぼす。

 日本は「50年排出実質ゼロ」の実現へ対策を具体化しつつ、さらに高い目標を目指すことで、世界をリードしたい。