(社説)広域避難 「逃げる先」の確保急げ

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 気象の激甚化が進み、河川の氾濫(はんらん)や広範囲にわたる浸水が頻発している。週後半から週明けにかけても警戒を怠れない。

 どこに住む人についてもその命とくらしの保護は国の使命だが、中でも人口が集積する都市部の住民をどう守るかは対策が急がれる大きな課題だ。

 東京、大阪、伊勢の3大湾岸には海抜ゼロメートル地帯が広がる。台風接近時などに、被害発生前から自治体の境を越えて住民を移動させる「広域避難」が提唱されるが、対象となる人数は膨大で簡単な話ではない。

 内閣府東京都は今年6月、首都圏の水害に備えた広域避難の取り組み方針を公表した。都の東部を流れる荒川・江戸川の氾濫や大規模な高潮の襲来によって、主に荒川流域の低地帯が浸水する事態を想定した。

 当初、国は約255万人を避難させることを考えていた。しかし、関東一円が被災した一昨年の台風19号で広域避難が現実の課題として浮上したとき、鉄道各社は早い時点で計画運休を決定。避難者の足の確保すらできない状況に陥った。

 このため今回の方針は、浸水の恐れが比較的小さい地域の人には自宅にとどまってもらうことにするなどして、避難者の数を74万人に絞り込んだ。

 実現可能性のある計画にすることに異論はないが、対象から外れた住民への目配りを忘れてもらっては困る。

 住んでいるところが浸水する恐れはどの程度か。マンションであれば上階に退避場所があるか。近隣の建物を利用することはできるか。いざという場合に行き場がないということにならぬよう、平時に自分で行動計画を作り、折にふれ点検するよう働きかける必要がある。

 住民も、日ごろから親類と連絡を取り合う、避難先になり得るホテルを確認し何かあれば早めに予約するよう準備する――といった行動を通して、安全の確保を心がけたい。

 広域避難する74万人の行き先の用意も急務だ。方針では、「比較的近距離にある公共施設および民間施設」の候補の中から、都が中心になって調整するという。首都直下地震がおきた際に帰宅困難者を受け入れると表明している企業にも打診し、早急に具体化すべきだ。

 東京だけではない。東海では62年前の伊勢湾台風と同じ進路をゆく台風を、大阪では淀川の氾濫を念頭に、国土交通省の機関と自治体が行政や住民の行動計画の策定を進めるが、作業は立ち遅れている。

 都市部を直撃する大水害は、いつ起きてもおかしくない。緊迫感をもって、対策づくりに取り組んでもらいたい。