(社説)緊急事態拡大 国会開き、覚悟を示せ

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 感染力の強いデルタ株の広がりを見込んで、専門家は早くから、今日のような新型コロナの感染爆発と医療逼迫(ひっぱく)に警鐘を鳴らしていた。にもかかわらず、ワクチン接種の加速に期待をかけ、医療提供体制や検査の拡充など、十分な備えを怠ってきた菅政権の責任は極めて重い。

 政府はきのう、まん延防止等重点措置が適用されていた7府県を緊急事態宣言の対象とし、新たに10県を重点措置に加えることを決めた。期間は20日から9月12日までで、すでに宣言や重点措置が出されている地域の期限も、8月末から9月12日に延長される。全都道府県のうち6割が宣言か重点措置の下に置かれる深刻な事態だ。

 菅首相は7月初め、東京都に4度目の宣言を決めた際、「東京を起点とする感染拡大は絶対に避ける」と述べたが、その約束は果たされなかった。「先手先手で予防的措置を講ずる」という言葉とは裏腹に、新規陽性者の急増を受け、宣言や重点措置を小出しにする泥縄式の対応に終始した。国民への行動抑制の呼びかけに矛盾する東京五輪の強行もあった。これでは、国民に危機感は伝わらない。

 宣言から40日近くたつのに、ピークが見えず、専門家が「制御不能」とまでいう東京の現状に鑑みると、今回の地域の拡大や期間の延長が、それだけで効果をあげるとは考えにくい。重点措置を宣言に引き上げざるをえない地域が相次いでいることも、今のままでは抑止効果がないことの証左といえる。

 百貨店の地下食品売り場などでクラスターの発生が相次いだことを受け、政府は従来の飲食店での酒類提供停止に加え、1千平方メートル超の大規模商業施設への入場制限の要請を新たな対策に盛り込んだ。しかし、専門家が求める人出の大幅削減につながるかは心もとない。

 首相が最近、強調するのが、自宅療養中に酸素の投与が必要になった場合に対応する「酸素ステーション」の設置や抗体カクテル療法への期待だ。これらの措置が、必要とする人に迅速に届くよう手だてを尽くすのは当然である。ただ、同時に、首相に今、求められるのは、政府の総力をあげて、できることは何でもやるという強い覚悟を示して、国民の理解と協力を得ることではないか。

 野党が求める臨時国会の開会に早急に応じる。政府と与野党が手を携えて対策に知恵をしぼり、国会質疑を国民への情報開示と協力呼びかけの場とする。コロナ対策が政権の最優先課題と繰り返す首相である。このくらいの対応に踏み切ることで、国民の命と暮らしを守る責任を果たすべきだ。