(社説)コロナと経済 苦境克服へ支援手厚く

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 「最大の危機」といわれる感染の拡大で、経済も先行きの不透明感が増している。中長期的な回復のためにも、ワクチン接種の推進と同時に、足元の感染抑止の徹底を図る必要がある。

 今週発表された4~6月期のGDP(国内総生産)速報は、前期に比べると、ややプラス成長になった。ただ、年初からならせばほぼ横ばいで、昨年後半の回復の後、停滞が続く。

 海外の景気回復により、輸出や設備投資は比較的堅調で、製造業の大企業では、業績がコロナ禍前を上回るところも目立つ。その一方、緊急事態宣言が繰り返され、個人消費は一進一退の状況だ。雇用も昨年に比べれば持ち直したものの、一昨年比では低迷している。

 今後の見通しはどうか。

 内外の政策的下支えや、繰り越しされている需要がいずれ動き出すことを前提に、感染収束さえ見えてくれば経済もいずれ回復に向かうとの見通しは、大筋では保たれている。

 とはいえ、ワクチンの効果と変異株による感染力の強まりが「綱引き」をしている現状では、停滞が長引いたり、再度落ち込んだりする懸念も拭えない。政府が、緊急事態宣言の対象地域の拡大と期間の延長を決めたこともあり、少なくとも個人消費は当面、力強さを欠くだろう。

 経済活動への直接の打撃は、引き続き飲食など対面サービス部門に集中している。度重なる休業要請の長期化で、すでに窮状が極まっている企業や働き手も少なくないはずだ。

 加えて、一段の人出の抑制のためには、制約の強化が避けられず、短期的にはさらに負荷がかかる。それを嫌って手を緩めれば結局、回復は遠のく。現在の「第5波」を乗り切ることに全力を挙げるため、十分かつ迅速な政策の実行で苦境の業界を支えることに、日本経済全体の持つ力を振り向けるべきだ。

 今回の局面では、経済活動の一線を担う現役層でも、感染者が急増している。部分的ではあれ、従業員の感染で人手不足になり、休業を余儀なくされる店舗なども出てきている。

 働き手の健康にとっても、社会的機能の維持のためにも、労働現場での感染拡大を防がねばならない。ワクチンの職域接種も一部で進んでいるが、政府の見込み違いによる混乱でスタートが遅れたり、業種や企業の規模によっては、そもそも十分な体制がとれなかったりするところも少なくない。

 大手企業は自社の従業員はもちろん、取引先や下請け企業の実情にも目配りし、働き手の健康管理や防疫にいっそう力を入れてほしい。

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