(社説)原発審査中断 原電に任せられるのか

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 敦賀原発2号機(福井県)の調査資料を日本原子力発電が書き換えた問題で、原子力規制委員会は再稼働に向けた審査の中断を決めた。審査を根底から揺るがす事態はなぜ起きたのか。問題の経緯と責任の所在を明らかにするとともに、先行きが見えない会社のあり方を考え直す必要がある。

 敦賀原発が立地する若狭湾周辺には多くの活断層がある。2号機直下にある断層も活断層の可能性があると、規制委の有識者会合が2012年に指摘した。直下に活断層があれば運転は認められず、廃炉となる。しかし原電は「活断層ではない」と主張、15年に再稼働審査を申請した。

 ところが、審査書類に1千カ所を超える誤記が判明。20年の審査会合では地質データの書き換えが発覚した。それも、採取した地層サンプルの観察記録という調査の根本である。これが信頼できなければ、原発の安全性を議論しても無意味だ。

 こうした生データの書き換えは、科学の観察や実験では厳に慎むべきことである。原電は、書き換えは現場担当者らの判断で、「いけないという認識はなかった」とする。担当役員らは事情を知らなかったと説明するが、技術者の教育をはじめ、管理や組織の規律が問われる問題だ。規制委が厳しく批判し、審査を中断したのも当然だ。

 しかも、計80カ所の書き換えには、断層が動いた可能性を否定する記述に改める部分もあった。運転が認められるか否かに関わる重要な部分だ。審査を有利にするため意図的に不正をしていたとすれば、原電に原発を運転する資格はない。

 原発審査はすべての資料の裏付けをとることは不可能で、性善説に立たざるをえない。電力会社が勝手にデータを書き換えるようでは、他の原発も含めて審査結果の信頼性に傷がつく。原電は、すべての関連資料と詳細な経過の公表が求められる。

 原発専業の原電は、電力を大手電力会社に売ることで成り立ってきた。原子炉4基のうち2基の廃炉が決まり、残る敦賀2号機と東海第二(茨城県)に会社の存亡がかかる。しかし再稼働をめざす東海第二は避難計画に不備があるとして、今年3月に水戸地裁で運転差し止めを命じられた。

 原電は東日本大震災以降、電力会社が契約に基づいて毎年払う「基本料金」で経営を維持しているが、存続の是非も含めて会社の今後を改めて検討すべきだ。問題を放置したままでは、原電の株主である電力各社もあまりに無責任である。長年の原発行政の結果でもあり、政府も主体的に関わらねばならない。

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