(社説)介護職員不足 将来見据えた対策を

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 65歳以上の高齢者数がほぼピークを迎える2040年度には約280万人の介護職員が必要になる――そんな推計を厚生労働省が公表した。

 各都道府県がまとめた介護保険サービスの利用見込みをもとに算出した。介護職員は年々増えており、19年度時点で約211万人。そうした近年の増加ペースを考慮しても、団塊の世代が75歳以上になる25年度に22万人、40年度には65万人が不足するという。

 少子高齢社会となり、介護保険の財政や、制度の持続性・安定性は大きな関心事だ。しかし働き手がいなければ、制度があってもサービスを維持することができなくなる。

 将来の需要の増加を見据え、介護人材の確保に、しっかり目を向ける必要がある。

 現場の人手不足は今でも深刻で、政府はこれまでも介護の担い手の待遇改善などに取り組んできた。

 4月の介護報酬改定では、経験・技能のある職員の賃金を上げる仕組みを使いやすくしたり、介護福祉士や勤続年数の長い職員の割合が高い職場の報酬を手厚くしたりした。

 だが、限られた保険財政のもとでは、とれる施策には限界があり、介護職員の賃金水準は全産業の平均よりなお低いのが実情だ。

 より踏み込んで待遇改善を進めるには、制度を抜本的に見直して保険財政の基盤を強化することを考えなければならない。保険料を納める対象を現在の40歳以上から引き下げて制度の担い手を増やすことや、税金投入のあり方など、幅広い議論が求められる。

 ただ、そうした本格的な制度の見直しには時間がかかる。並行して、働きやすい職場になるよう環境改善も進めるべきだ。見守り機器などを活用した職員の負担軽減や、情報通信技術を使った事務作業の効率化の事例など、先行する取り組みの情報を広く共有し、全国に広げてほしい。

 政府は他業種からの人材の参入を促そうと、職業訓練の枠の拡充や、訓練後に介護の仕事で2年以上働くと返済が免除される就職支援金なども進めている。外国人材の受け入れにも前向きだ。

 だが、新たに掘り起こした人材に長く働き続けてもらうためにも、働きに見合った賃金などの待遇を提供できるようにするとともに、魅力のある職場環境を整えることが欠かせない。

 短期で解決すべき問題と、中長期を見据えた検討課題と。政策の時間軸を念頭に置いたうえで、一つ一つの取り組みを着実に進めていかねばならない。

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