(社説)デジタル庁 国民の信頼を第一に

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 菅首相肝いりのデジタル庁があす発足する。デジタル化が進めば利便性の向上が期待できるが、個人情報保護への懸念と隣り合わせである。改革には国民の信頼が欠かせないことを、政府は肝に銘じるべきだ。

 コロナ禍は日本の行政のデジタル化の遅れをあらわにした。1人10万円の現金給付では電子申請のトラブルが続出。感染者との接触を知らせるスマホアプリは不具合が4カ月以上、放置された。日々のワクチン接種状況も把握できずにいる。

 政府が「IT革命」を唱えて20年を経ての実情を、真摯(しんし)に受け止めなければならない。

 改革の司令塔となるデジタル庁は内閣直属で設置される。子育てや引っ越しなどの手続きをオンラインで一括申請できるようにしたり、緊急時に迅速に現金給付する仕組みを整えたりする。自治体ごとに違っていたシステムも標準化し、コスト削減と情報共有の強化を図る。

 発足時の職員は約600人。このうち事務方トップのデジタル監をはじめとする約200人を民間から採用する。国民目線に立ったシステムを作るため、民間人を積極採用する必要性は理解できる。ただ、利益相反が生じる不安は拭えない。

 内閣官房IT総合戦略室の職員6人の処分に至った東京五輪パラリンピック向けアプリ発注をめぐる問題についての政府報告書によると、開発を率いた民間出身の室幹部と親しいベンチャー企業社長が、仕様書の作成に深く関与し、一部業務を下請けした。事業費の一部が還流する契約を結んでいたこの幹部は、社長から頻繁に高額接待されていたとも指摘されている。

 デジタル庁の母体となるIT室での、癒着を疑わざるをえない惨状だ。デジタル庁は、民間登用した職員が関与した契約では、職員が兼業する企業の入札を制限するという。だが、企業を辞めてデジタル庁で勤務し、その後、元の企業に戻っても、規制の対象外だ。退職後に在任中の不祥事が判明した場合の責任はどうなるのか。抜本的な再発防止策が求められる。

 中核を担う官僚に専門知識が無ければ、民間人材の不正を見抜けない。来年度には、国家公務員総合職でデジタル職の採用が始まるが、当面は各省庁からの出向職員の中から人材を育てることになる。そのための人事制度も検討課題だ。

 デジタル庁の創設とともに、政府は国民のデータの活用も図る方針だが、個人情報保護の強化と両輪で進める必要がある。個人情報保護委員会を拡充すると言うが、体制強化の具体策はこれからだ。データ活用ばかりの先行は許されない。