(社説)コロナ下の首相 国会より延命策優先か

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 憲法の規定に基づいて野党が求めた臨時国会の召集ははねつける一方で、党役員人事や衆院解散の日程までからめて延命策を探る。「コロナ対策が最優先」と繰り返してきた菅首相の言葉は口先だけだったというほかない。これでは国民の政治への信頼が失われるばかりだ。

 新型コロナの新規感染者は、東京ではやや減少傾向にあるが、先の見通しは予断を許さない。全国の重症者数は過去最悪の高い水準にあり、医療体制の逼迫(ひっぱく)も変わらない。自宅療養中に亡くなる人も相次いでいる。

 にもかかわらず、6月の閉会以降、国会は2カ月半にわたって閉じたままである。委員会の閉会中審査はあるが、時間は限られ、何より首相が答弁に立つことはない。首相は緊急事態宣言などの適用に先立つ国会報告も、担当閣僚任せだ。国会から逃げ続けている。

 この間、適切な予算や立法措置で、備えを厚くしておけば、現下の深刻な事態にも違った対応ができたかもしれない。その機会をいたずらに失った政権の責任は極めて重い。

 憲法53条は、衆参両院のいずれかで、総議員の4分の1以上の求めがあれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと定める。この規定に基づく野党4党の要求は7月だった。1カ月半に及ぶ放置は許されるものではない。

 安倍前内閣が4年前、野党の召集要求に応じなかったことが憲法に違反するかどうかが争われた裁判の判決で、那覇、岡山両地裁が、内閣には合理的な期間内に応じる「法的義務」があり、対応によっては違憲となる可能性があると指摘したことを忘れてはならない。

 今の衆院議員の残り任期を考えれば、臨時国会の会期は限られたものになろう。それでも、与野党が協力し、病床の確保策など、対応が急がれる課題に集中的に取り組むことはできるはずだ。自民党総裁選に立候補を表明した岸田文雄政調会長は「総裁選をやるから、国会はできないという話ではない。国会は必要ならちゃんと開けばいい」という。首相の判断が問われている。

 しかし、首相の頭の中を占めているのは、総裁選で再選を果たす算段ばかりのようだ。月内解散で総裁選を先送りする選択肢は否定したものの、近く二階俊博幹事長ら党4役の一新をめざしているという。

 任期切れ直前の総裁が大幅な党人事を行うのは筋違いであるし、何より、厳しい民意を突きつけられているのは首相自身であることをわかっていない。自らの生き残りを最優先した個利個略である。