(社説)3度目の延長 医療再構築を最優先で

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 緊急事態宣言が19都道府県で今月末まで延長されることになった。2度の延長を経ても感染を抑えることはできず、期間は過去最長になる見通しだ。

 7月上旬に発出を決めた際、菅首相は早期解除の可能性に言及し、その楽観的な姿勢は批判を呼んだ。懸念どおり、感染は東京から全国に飛び火し、重症者数は最悪の水準で推移している。自宅に留め置かれたまま亡くなった人を含め、この間の死者は約1500人にのぼる。医療崩壊というべき現象を招いた政治の責任は極めて重い。

 強行された五輪が、休業要請や外出自粛の呼びかけと矛盾するメッセージとして伝わり、変異株の猛威や夏休みによる移動の増加とあわせて、感染拡大をもたらしたと見るのが自然だ。選手村など「バブル」の中の安全だけに目を向け、五輪の影響を否定する首相や小池百合子都知事の言動が、人々の不信をさらに深める悪循環も生んだ。

 緊迫した状態が続くなか注目されるのは、おととい政府の分科会が示した、宣言を解除する際の新たな指標だ。感染者数の動向を踏まえつつ、医療の逼迫(ひっぱく)具合をより重視しようという考えで、保健所業務や一般医療の状況も判断材料に加える。

 おおむね妥当な内容と評価できるが、疑問や課題もある。

 新たな指標が医療機関や保健所の現場感覚を真に反映したものになるか。解除後、感染が再び上昇局面に入ったときは、何に基づいて判断するのか。感染者数への関心が薄れると、最初の兆候を見誤り、対策が後手にまわる恐れはないか――。

 今のままでは宣言を解除できないから指標を変えるのでないかといった疑念を招かぬよう、専門家にはていねいで説得力のある説明が求められる。

 「自宅療養」中の感染者は全国で13万人を数え、入院先の確保は喫緊の課題だ。

 東京都では法律に基づく医療機関への協力要請がなされ、病床が多少積み増しされた。まずは、公表されている数字がどれだけ実態を伴ったものなのかを精査することが必要だ。

 コロナ以外の医療への目配りも忘れてはならない。人手や病床を確保するため、さまざまな形で通常の医療の制限が見られる。生命・健康に関わる深刻な問題だ。地域の実情を把握し、市民に伝えるのも自治体の責務だ。医療を取り巻く環境を正しく認識してもらうことは、危機感の共有にもつながろう。

 この波を乗り切れても、気温や湿度が下がる冬に再び感染が広がる心配もある。昨年同様、インフルエンザとの同時流行も想定し、先を見据えて医療態勢を構築していかねばならない。