(社説)北朝鮮の挑発 対米対話しか道はない

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 北朝鮮の国営メディアはきのう、新型の長距離巡航ミサイルの試射に成功したと伝えた。

 弾道ミサイルではないため、国連の安保理決議違反には当たらないが、1500キロの距離を飛行したと報じられている。

 事実であれば日本列島をほぼ射程に収め、地域の安定をおびやかすことは間違いない。

 北朝鮮は、際限のない軍備強化と挑発の不毛さを認識すべきだ。自らの経済苦境を脱するためにも、米国のバイデン政権との対話に応じるべきである。

 金正恩(キムジョンウン)総書記は1月、中長距離の巡航ミサイルを開発したと語っていた。また、妹の与正(ヨジョン)氏は、先月あった米韓合同軍事演習の際、「必ず代価を払うことになる」と反発していた。

 巡航ミサイルの試射は、その代価の一つのつもりだろう。

 だが一方で、最近の北朝鮮からは、米国との関係悪化は望まず、条件次第では対話を始めたいとの発信も垣間見える。

 金総書記は6月、米国に対し「対話にも対決にも準備しなければならない」との微妙な言い回しで交渉に関心を示した。

 北朝鮮の核関連施設では再稼働の動きが伝えられる。ただ、監視衛星にわざと見えるように進めるのは、米国に譲歩を迫る際の常套(じょうとう)手段でもある。

 米朝対話は、トランプ前大統領によるハノイでの首脳会談以来、2年間滞っている。

 バイデン政権は、問題の一括合意を求めた前政権と異なり、北朝鮮の段階的な非核化をめざす「現実的なアプローチ」を掲げる。その上で対話の再開を求めているが、回答はない。

 北朝鮮の外交が止まって見える背景には、米国への警戒感のほか、コロナ感染の恐怖もあるのでは、といった見方がある。理由が何であれ、北朝鮮を対話の舞台に誘い出す努力を周辺国は惜しむべきではない。

 米中両首脳は先日、7カ月ぶりに電話で協議し、気候変動など双方の利益が重なる分野に積極的に関与していくことを確認した。朝鮮半島の非核化は、まさにその領域に含まれる。

 北朝鮮が体制保障のために最重視する交渉相手の米国と、最大の後ろ盾である中国との協力が問題の解決に欠かせない。

 日米韓の協調も、同様に大切な枠組みである。3カ国はきょう、東京で北朝鮮問題の高官協議を開く。食糧・エネルギー不足が深刻な北朝鮮の態度をいかに和らげさせるか、実効性ある方策を練ってもらいたい。

 現政権の任期が残り少ない韓国は、対北制裁の緩和に意欲的だ。だが、分別のない支援は根本的な解決につながらない。あくまで北朝鮮の行動内容に応じた見返りを心がけるべきだ。

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