(社説)グリーンGDP 経済のゆがみ 見直そう

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 脱炭素社会の実現は、待ったなしの政策課題である。推進に向けた機運を高めるうえで、内閣府が検討する「グリーンGDP」が有力な手段となるよう期待したい。

 国内総生産(GDP)は、一定期間に生み出された経済的な価値を示す。家計、企業、政府、海外経済と幅広い分野の活動を俯瞰(ふかん)できる指標として役立つ。だが、経済活動のゆがみを十分にとらえていない限界も、念頭に置く必要がある。

 例えば、大気や水質を汚染しても、その負の価値はGDPから引かれない。それどころか、汚した大気を浄化するための投資をすれば、需要が増えてGDPは大きくなる。

 この矛盾を改善する一助として内閣府が研究しているのが、グリーンGDPだ。例えば、通常のGDPの成長率を、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出で成長した分で調整する。

 グリーンGDPで、環境負荷を「見える化」できれば、温暖化対策で成長が鈍化しても、社会が受け入れやすくなる。毎年数値を公表できないか、前向きに検討してほしい。

 ただ、心配な面もある。

 経済協力開発機構OECD)の試算だと、1991~2012年の日本の成長率は通常のGDPでは0・93%だが、グリーンでは1・34%に高まる。一方、中国の同期間の成長率は通常は10・21%、グリーンだと9・46%にとどまるという。

 日中のグリーン成長率の差は、通常のGDPに比べれば縮小するが、縮小幅は約1ポイントでしかない。違和感は否めない。

 地球温暖化の負の効果は、大胆な仮定を置いて計算せざるを得ない。環境技術の変化をどう織り込むかも難題だ。しかし実態とかけ離れた数字が独り歩きすれば、温暖化対策をめぐる議論が混乱しかねない。

 政策の参考として堪えうるには、社会の信頼を得る必要がある。試算方法が恣意(しい)的にならぬよう、幅広い専門家が議論を重ね、根拠をわかりやすく説明することが求められる。

 今のGDPの計算方法では、労働時間の短縮やネットの普及による消費者の満足度の上昇も捉えられない。時代の変化を踏まえて、不断に見直すべきだ。

 内閣府中央省庁再編で、01年に旧経済企画庁などを統合して誕生した。歴代首相の目玉政策の調整に人員が割かれ、職員の官庁エコノミストとしての能力の低下が指摘されている。

 現状を正しく認識できなければ、適切な処方箋(せん)は描けない。GDPをはじめとする経済分析の基盤を維持するためには、十分な人材を確保し、長期的に育成しなければならない。

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