(社説)中国TPP申請 ルール順守の見極めを

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 中国が先週、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を正式に申請した。

 中国は日本にとって、輸出入の両面で最大の貿易相手国である。TPP加盟で関税撤廃などが加速すれば、日本経済の成長に寄与すると期待される。

 ただ、TPPの自由化の水準は高い。協定が定める国有企業の優遇禁止や、データの自由な移動、政府調達の公平性などの条件を満たすには、中国は政策を抜本的に改める必要がある。

 中国加盟のために、TPPの質を劣化させることがあってはならない。日本を含めた加盟国は、中国の覚悟を慎重に見極めねばならない。

 TPPをはじめとする多国間の自由貿易協定(FTA)は、機能不全が続く世界貿易機関(WTO)を補完する役割が求められている。世界2位の経済大国である中国が加盟すれば、モノだけでなく、サービスや知的財産など広範な分野にわたるTPPのルールが、世界標準に発展する大きな一歩になろう。

 環太平洋の経済秩序が、自由や法の支配などの価値観を日本と共有する米国抜きで形成されることは望ましくない。国際協調を掲げる米国のバイデン政権だが、国内で賛否が割れるTPPへの早期復帰には否定的だ。しかし中国の申請を機に、方針を転換するべきだ。

 菅首相はきょうから訪米し、日米豪印4カ国首脳会談に参加する予定だ。TPP加盟国の豪州と足並みをそろえ、バイデン大統領に翻意を促す機会にできるのではないか。

 米中対立のもとで、中国は米国のいない多国間の枠組みで影響力を高めようとしてきた。今回の申請もその一環であろう。

 TPPにはもともと、台頭する中国に、アジア太平洋での主導権を握らせないための枠組みという側面もある。加盟国のうちベトナムは中国と領土問題を、豪州は通商摩擦を抱えている。TPP加盟には全加盟国の同意が必要で、今後の協議は難航が必至だ。

 だが、中国が本当に改革に取り組むのであれば、排除し続けることが正解ではないだろう。世界恐慌後に列強のブロック経済化が進んで世界大戦の一因になったことへの反省から、戦後の国際社会が自由貿易体制を推進してきたことを、思い返す必要がある。

 目指すべきは、中国を新たな国際秩序に取り込む場としてTPPを生かすこと。そこに米国も関与させ、米中の相互理解を深めることである。

 日本は今年、TPPの議長国を務める。米中が共存共栄する経済圏の構築に向け、議論を先導してほしい。