(社説)河井陣営資金 これで幕引き許されぬ

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 党本部が提供した資金が、買収に使われてはいなかったか。この重大な疑念を晴らし、国民の政治への信頼を取り戻したいと本気で考えているのなら、こんな通り一遍の簡単な説明で済ますことなどできまい。新総裁の誕生を前に幕引きを急ぐ姿勢は許されるものではない。

 一昨年の参院選広島選挙区を舞台にした公職選挙法違反事件である。有罪判決が確定し、参院議員を失職した河井案里氏側に渡した1億5千万円について、自民党が先週、買収には使われなかったと発表した。うち税金が原資となる政党交付金は1億2千万円で、その使途の内訳は、機関紙の発行など広報に1億900万円、人件費に1070万円などとした。

 しかし、これらは案里氏と夫の克行元法相から連名で提出された報告内容を、そのまま紹介したものだ。項目ごとの金額はあるが、例えば機関紙の部数や発行回数、単価などの明細はなく、何よりも、裏付けとなる領収書は一切示されていない。これではとても納得できない。

 驚くのは、党本部が何ら主体的な調査や確認をすることなく、夫妻の報告を即日、右から左へ受け流すように公表したことだ。記者会見した柴山昌彦幹事長代理は、すべて領収書があり、監査人のチェックを受けているので、その必要はないとの考えを示したが、公党としての責任感が欠如していると言わざるを得ない。

 会見の案内はわずか20分前。1億5千万円の支出に責任を負う二階俊博幹事長が自ら説明に立つこともなかった。4月に行われた参院広島選挙区の再選挙で、自民党候補が野党系候補に手痛い敗北を喫した苦い教訓はどこへ行ったのか。

 一審で懲役3年の実刑判決を受けた克行氏は、県内の地方議員や首長ら100人に計約2900万円を渡したと認定された。原資については「手持ちの資金」と説明したが、具体的にどうやって工面したのかは不明のままだ。

 党本部からの巨額の資金で表の活動を賄えたからこそ、手持ち分を買収に充てることができたとの指摘もある。同じ選挙区で落選した現職の10倍の金額を投入し、当時の安倍首相菅官房長官が行った異例のテコ入れが事件の背景にあることを忘れてはならない。

 総裁選では、広島県選出の岸田文雄政調会長が、党改革の柱に「政治とカネ」の問題をあげ、国民への丁寧な説明と透明性の確保を掲げるなど、各候補が政治不信の払拭(ふっしょく)を訴えている。誰が新総裁になっても、河井事件への党の責任はまだ果たされていないと知るべきだ。

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