(社説)送還違憲判決 断罪された入管の「闇」

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 難民認定の申請を退けられた外国人を、裁判で争う機会を奪う形で強制送還したのは、憲法が保障する「裁判を受ける権利」の侵害にあたるとして、東京高裁が国に賠償を命じた。

 入管当局のこれまでの実務とその背景にある人権意識の低さが、司法によって断罪されたといえる。行政に臨む姿勢を根底から見直す必要がある。

 原告のスリランカ人の男性2人は、難民と認定されず、異議申し立ても棄却された。14年12月に入管施設内でその通知を受け、提訴する意向を示したが、弁護士に相談できないまま、翌日、日本政府が集団送還用に用意したチャーター機で母国に送り返されてしまった。

 行政事件訴訟法は、処分や裁決をした場合、本人に伝え、6カ月以内に裁判を起こせると教示しなければならないと定めている。ところが入管は、異議を退けた事実自体を、2人に40日以上通知していなかった。

 東京高裁は22日に言い渡した判決で、裁判に訴えられる前に送還してしまおうと、直前まで通知を遅らせ、弁護士に連絡することも事実上認めなかったと判断。憲法32条の裁判を受ける権利のみならず、31条の適正手続きの保障や13条の個人の尊重にも反すると結論づけた。

 裁判で国側は、2人が難民申請したのは日本に残りたいための方便だとも主張したが、高裁は「仮にそうだとしても、司法審査の機会を奪うことは許されない」と一蹴した。

 申請を送還妨害目的だと決めつけ、外国人にも認められている憲法上の権利を踏みにじる。そんな入管の行いが許されるはずがない。国は判決を受け入れて、謝罪するのが筋だ。

 問題なのは、こうした手法は今回の2人だけにとられた特異なものではないということだ。

 同じく異議棄却の決定を40日後に知らされ、翌日に強制送還されたケースについて、名古屋高裁は今年1月、公権力の違法な行使にあたると述べた。

 国は上告せず、6月以降、棄却通知から送還まで2カ月以上空ける運用に変えたというが、それで落着とはならない。他にも同様の違法な処遇を受けた人がいたことが想定される。調査して結果を公表すべきだ。

 19年までの5年間で約4万人が強制送還された。多くは自費出国だが、5%は入管が帰国便を手配し、文字通り強制的に送り返した。特にチャーター便による集団送還に対しては、家族との関係など個々の事情を見ようとしない、効率優先で強引なやり方として批判が出ていた。判決が改めて浮き彫りにした入管の非人道的な体質と、速やかに決別しなければならない。

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