(社説)宣言全面解除 「6波」への備え着実に

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 各地に出ている緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が、30日で解除されることになった。

 新規感染者数の急減が今回の判断につながったが、その原因をめぐっては専門家の間にも様々な見解がある。ワクチン接種の進展が奏功したのは間違いない。だが、より接種が進んだ国で感染が再拡大している例も見られる。警戒を怠らず、「第6波」への備えを確実にしたい。

 なかでも、臨時の医療施設やホテルなどの宿泊療養施設の確保を含めた、医療提供態勢の再構築が急がれる。

 コロナ以外の通常医療を維持しつつ、地域の医療資源を最も有効に活用するには、どんな制度や支援策を講じるべきか。

 たとえば田村憲久厚生労働相はテレビ番組で、医療従事者を「輪番」で臨時施設に回す案に言及した。言うはやすしだが、どうやって実現するのか。

 自民党総裁選の論戦を通じても、この喫緊の課題に対処する道筋は見えていない。当事者である医療界や自治体も交えて、検討を進める必要がある。

 感染対策の周知徹底にも引き続き意を尽くさねばならない。

 最近は子どもの感染が増え、学校や保育園でクラスターが多数報告される。最初に感染者が見つかった段階で、迅速かつ幅広く検査を行い、拡大を最小限に抑えることが肝要だ。

 厚労省は医療用の「抗原検査キット」の薬局での販売を認めた。需要を踏まえた妥当な措置だが、PCR検査とは精度などに違いがある。利用方法について丁寧な情報発信が不可欠だ。

 また、科学者や医師らから空気感染のリスクが指摘されるようになり、換気の重要性に改めて注目が集まっている。室内にとどまりがちな冬に向けて、対策のガイドラインなどの見直しにも取り組んでもらいたい。

 宣言などの解除によって日常生活の回復への期待が高まる。とはいえ拙速は禁物だ。

 ワクチン接種や検査結果の証明を利用した行動制限の緩和も、社会の広範な合意が前提となる。まずは、近く始めるという「実証実験」の内容を詰め、データを集めて問題を整理していくことが求められよう。

 感染状況が落ち着いている時は、長期的課題の解決を探る好機でもある。ワクチンや薬の治験などに時間がかかることが問題になったが、人材、制度、歴史が絡み、一朝一夕に変えられるものではない。組織の創設や大がかりな法改正も同様だ。

 そうした議論を深めるためにも、先送りされたままの安倍・菅政権のコロナ対策の検証をしっかり行い、反省点や教訓を導き出すことが欠かせない。次の政権に課せられた重い宿題だ。

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