(社説)国会代表質問 「違い」見えぬ首相答弁

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 「丁寧な説明」とは、単に口調を指すものではない。厳しい質問にも真摯(しんし)に向き合い、お定まりの答弁で受け流すのではなく、情理を尽くした内容を伴わねばならない。これでは、説明責任に対する姿勢も、政策の中身も、菅前首相や安倍元首相との違いは見えてこない。

 岸田首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まった。衆院選前、首相の最初で最後の国会論戦である。質問1回答弁1回の一方通行だが、「丁寧な説明」を掲げる首相が、安倍・菅政権の反省のうえに、自らがめざす政治をどう語るかに注目したが、肩すかしだった。

 「新しい日本型資本主義」を看板とする首相は、「成長」の意義も忘れてはいないが、従来より「分配」を重視しているのは明らかだろう。しかし、「分配なくして成長なし」という立憲民主党枝野幸男代表に対して強調したのは、アベノミクスの成果だった。

 岸田政権の経済政策としてまず挙げた「大胆な金融政策、機動的な財政政策成長戦略の推進」は、アベノミクスの三本の矢そのもの。分配政策として総裁選で公約した金融所得課税の見直しは「選択肢のひとつ」に後退した。「民主党政権の失敗」から学んだという言いぶりは、「悪夢」と決めつけて批判を繰り返した安倍氏の答弁を思い起こさせる。

 枝野氏はまた、被爆地・広島が地元の首相に対し、核兵器禁止条約の締結国会議へのオブザーバー参加を迫った。首相は「出口」としての条約の重要性は認めながら、核保有国の協力が必要だとして、関与を求める努力の必要性を指摘するにとどめた。所信で「核兵器のない世界」に向け全力を尽くすと宣言しながら、従来の政府方針から踏み込めないのは情けない。

 安倍・菅政権の「負の遺産」を清算する意思も意欲も感じられなかった。現金授受疑惑を抱える甘利明幹事長の説明責任については「政治家が自ら判断すべきもの」。野党が求める政治倫理審査会への出席は「国会でお決めになること」。安倍、菅両首相が頻繁に使った逃げ口上と同じではないか。

 森友学園をめぐる公文書改ざんでは、「結論が出ている」として再調査を否定。自民党河井案里氏側に渡した1億5千万円の使途についても、党本部としてチェックする考えはないとした。日本学術会議の会員候補6人の任命拒否も「当時の首相が最終判断し、一連の手続きは終了した」とにべもなかった。

 総裁選の際に語った「民主主義の危機」という認識は一体何だったのか。これでは政治への信頼回復はおぼつかない。

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