(社説)首都圏の地震 対策の穴次々 見直しを

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 人口が集積する都市のもろさが改めて浮き彫りになった。首都直下地震への備えを根本から見直す必要がある。

 7日夜に起きた千葉県北西部を震源とする地震で、首都圏のJRや地下鉄などの運行が止まり、大勢の帰宅困難者が発生した。停電した駅構内で途方に暮れる人も多くいた。

 足止めを食らい、家に帰れなくなるだけではない。道路に人があふれる事態になれば、緊急車両の通行は妨げられ、群衆雪崩の危険もある。いずれも生命の危険に直結する話だ。

 政府は10年前の東日本大震災で約515万人もの帰宅困難者が出た後、災害時にはむやみに家をめざさないよう人々に呼びかけ、幹線道路沿いのビルなどに身を寄せられる場所を設ける方針を示している。

 ところが今回設置された一時滞在施設は、東京、神奈川、千葉の3都県で合わせてわずか6カ所、利用者は約120人にとどまった。帰宅の足を奪われた人の規模に比べてあまりに少ない。都は混雑が発生しているとみた地域で部分的に開設したというが、遅すぎ、少なすぎる対応には不安を拭えない。

 6カ所の一つ、東京都港区の施設の場合、都から要請があったのは8日午前2時すぎで、それから準備を進め、結局、利用したのは7人だった。判断や連携に省みるべき点はないか。市民に情報は適切に届いていたのか。国・自治体で検証し、夜間の即応態勢や誘導要員の確保策などを総点検すべきだ。

 企業の対応も問われる。人の滞留は8日朝にも発生し、多くの駅前に長い列ができた。出社の抑制や時差出勤の指示が早めに出ていれば、ある程度緩和できたはずだ。やむを得ない職種や事情がある人は別として、コロナ禍で広がった在宅勤務の経験を生かすことを、もっと考えて良かったのではないか。

 社員向けサイトで無理をしないよう呼びかけた会社や、震度5強以上の地震が起きたら「2日間は在宅」とあらかじめ決めているところもある。13年に施行された都帰宅困難者対策条例は、社員の安全確保などに企業が責任をもって取り組むよう求めている。いま一度確認し、社員に周知してほしい。

 他にも、水道管の破損やエレベーターの運転停止などが各地で見られた。都市インフラの機能停止を避けるには、こまめな点検が何より重要だ。

 東京23区で震度5強を観測したのは東日本大震災以来だ。自治体も企業も人も、当時の記憶や教訓が薄れてはいないか。他の都市もいつ大きな揺れに襲われるかわからない。今回の地震を備えを見直す契機にしたい。

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