(社説)無国籍の子 実態つかみ支援に動け

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 五輪やノーベル賞の発表など「国籍」に考えを巡らせる機会が続いた。誰にもあるものと思いがちだが、国籍のない人は国連難民高等弁務官事務所の推計で数百万人規模にのぼる。

 無国籍者を減らすことをめざす国際条約が採択されて、今年で60年になる。紛争で国そのものがなくなった、国家が特定の民族を迫害して国民として認めないなど、無国籍者を生む背景は複雑で多様だ。個人がどの政府からも保護されないという、不安定で過酷な状況をなくしていかなければならない。

 遠い国の話ではない。日本でも無国籍の幼い子が近年急増している。出入国在留管理庁によると、無国籍の0~4歳児は昨年末で211人と、5年間で約4倍になった。調査方法に制約があり、実際はもっと多いといわれている。

 同庁はまた、16~20年に日本で生まれ、無国籍だった子について追跡調査を初めて実施した。対象の約300人の2割以上は、今年4月の時点でも引き続き国籍がなかったという。

 増加の理由は何か。

 技能実習生や留学生など日本に住む外国人が増えるなか、子どもが生まれたが、事情があって親が自身の国籍国に届け出ていない、親自身が無国籍状態で手続きできない――といったケースが考えられる。

 住民登録されていれば、健康診断や通園・通学などの日常生活に直ちに支障が生じることはない。だが親が非正規滞在の場合、子は社会から「見えない」存在に陥りがちだ。その後も無国籍者には、海外旅行や留学、結婚、出産といった人生の節目で壁が立ちはだかる。

 国籍は個人の権利の土台であり、アイデンティティーの形成に深く関わる。日本も加盟する子どもの権利条約は、国籍を得る権利を明記しており、問題の解消は政府の務めだ。大人も含め無国籍者の実態を把握することが、まず必要だ。

 実務の面で再考すべき点もある。たとえば、母親の経歴などから入管当局が子の国籍を安易に判断し、在留カードに記載することが珍しくないと支援団体は指摘する。旅券の申請などで大使館と接触して初めて、自分が国民とみなされておらず、無国籍者だとわかるという。受けるダメージは計り知れない。

 日本国籍を積極的に認める運用も求められる。国籍法は、日本生まれで、父母が不明か無国籍の場合、その子は日本国民とすると定める。該当する可能性があれば、法をふまえた対応を速やかにとらねばならない。

 日本は一人ひとりの人権を大切にする国か、そうでないか。少数者への接し方が映し出す。