(社説)衆院選 成長と分配 具体策を競い合え

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 衆院選での論戦の焦点の一つは、経済をどう成長させ、その成果をどう分配するかだ。

 安倍政権発足時から6年近く続いた景気拡大期に、企業の利益は2・6倍に拡大したが、賃金は7%しか増えなかった。一方、配当は88%増え、企業の内部留保は52%も膨らんだ。

 異次元の金融緩和や法人減税の恩恵の多くは、金融資産を持つ富裕層や企業に回り、庶民には届かなかったと言える。

 コロナ危機が格差に拍車をかけるいま、「格差の拡大に目を向け、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現を目指す」とする岸田首相の経済政策の方向性は理解できる。

 気になるのは、具体策が安倍政権のものと代わり映えせず、効果が疑わしいことだ。

 例えば、賃上げした企業に対する法人減税は、安倍政権下で実施済みだ。減税を強化するというが、一時的な税負担の軽減で、一度上げたら下げるのが難しい賃金を、多くの企業が引き上げるとは考えづらい。

 そもそも法人減税には、黒字企業にしか適用されない限界がある。高収益企業だけが政策の後押しで賃上げするのでは、かえって格差が広がりかねない。

 岸田氏は、下請け対策を強化し、大企業に利益が集中する構造を是正することも掲げている。重要な取り組みだが、取引価格は企業間の交渉で決まるのが原則であり、政府による過度の干渉には弊害もある。

 日本の最低賃金は、国際的な水準よりも低い。急ぐべきは最低賃金を大幅に引き上げ、企業がそれに対応できるよう、生産性向上に向けた動きを支援することだ。

 安倍政権以来の経済政策「アベノミクス」が示したのは、企業や富裕層が豊かになっても、その富は必ずしも社会にしたたり落ちてはこないという現実である。コロナ禍でも、業績が堅調な企業は多く、株価も高水準を保つ。税による所得再配分機能の強化が欠かせない。

 岸田氏は、総裁選で金融所得課税強化を掲げたものの、自民党公約では雲散霧消した。「分配なくして次の成長なし」の持論はどこへ行ったのだろうか。「まずは成長」ならば、アベノミクスとうり二つである。

 分配を重視するのは野党も同様だ。立憲民主党は、大企業への法人税や金融所得課税の強化に加え、所得税の最高税率の引き上げを訴える。国民民主党も富裕層への課税強化を唱える。

 ただ、各党の主張はスローガンにとどまるものが多い。有権者の判断材料になるよう、具体的な政策の中身やその実施時期を、論戦を通じて示して欲しい。

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