(社説)台風の教訓 情報伝達の複線化を

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 100人を超す死者・行方不明者を出した19年10月の台風19号の襲来から、2年が過ぎた。北陸新幹線車両基地が水没した光景は記憶に新しい。

 12日に伊豆半島に上陸し、関東、東北を縦断した台風は、記録的な大雨と暴風、高波を伴い、防災面で多くの課題を突きつけた。政府は、川沿いの自治体や住民が一体でとりくむ「流域治水」の推進や、手薄だった中小河川の洪水対策などを進めてきたが、なお道は遠い。

 国土交通省によると、本流・支流を含め70以上の河川の140カ所で堤防が決壊し、3万戸超が全半壊した。

 大きな反省点は、避難のための情報が十分に伝わらなかったことだ。同省のサイトはアクセスが集中してつながりにくくなり、緊急メールの配信もできなくなった。気象庁は13都県に大雨特別警報を出したが、解除した後に川から水があふれる事態が続出し、住民は混乱した。

 これらを教訓に、国交省はサーバーの増強や水位監視カメラの増設などを進め、気象庁は特別警報を解除する際には、その後の氾濫(はんらん)見通しをあわせて発表するようになった。

 だがハード面の整備をはじめ、時間がかかる施策も多い。最近は気象会社が地域別に5分ごとの予報を流すなど、多様な情報が発信されている。競合する面もあるが、何より大切なのは国民の生命だ。官民でデータを共有し、非常時の伝達ルートの複線化に尽力すべきだ。

 ふだんからの情報提供も欠かせない。特に重要なのがハザードマップの整備と周知だ。

 被災住民への内閣府のアンケートでは、マップについて5割近くが「見たことがない」「見たことはあるが避難の参考にしていない」と答え、わかりにくいという声も多数あった。

 想定最大規模の洪水だけでなく、雨水が市街地にあふれる内水氾濫のリスクを反映させるなど、より身近なものにして活用を促すことが必要だ。国交省は10~30年に1度の中高頻度の雨を想定したマップづくりを進める。家庭でのマイタイムラインの作成や、まちづくりにも役立つよう改善を続けてほしい。

 台風19号で被災して仮設住宅やみなし仮設で暮らす人は、今月1日現在で11都県に5174人いる。法律上は2年とされる仮設の入居期限を、来年まで延長した県もある。民間住宅のあっせんも含め、各自治体が生活再建の支援に全力を挙げるべきは言うまでもない。

 気象の激甚化は多くの想定外の災害を引き起こしている。身近な危険に平時から注意を払い、避難経路や備蓄品を点検するなど、備えを万全にしたい。