政治とカネ、選挙区に波風 東京15区・東京9区 衆院選

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 19日に公示される衆院選では、政治が信頼を取り戻せるのか否かも問われる。前回衆院選からの4年間で、「政治とカネ」を巡る刑事事件や不祥事による議員辞職が相次いだ。その足元の選挙区では、政権与党の自公に限らず、野党側も複雑な事情を抱えている。斉藤佑介御船紗子、岡戸佑樹)

 ■東京15区 「カオス」8人立候補予定 保釈中の秋元氏・自民は2人推薦

 「カオス(混沌〈こんとん〉)」。現時点で8人が立候補を予定する東京15区(江東区)では、有権者からそんな声が聞こえてくる。中心にいるのは無所属の2人だ。

 一人はカジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡る収賄などの罪で逮捕・起訴され、有罪判決を受けた秋元司氏(49)。事件発覚後に自民党を離党し、今回、無所属で出馬する。もう一人は無所属で出馬予定の地元出身の柿沢未途氏(50)だ。前回は希望の党から立候補し、比例で復活当選した。

 15日夜、自民党本部が下した決定に対し、地元の自民関係者に衝撃が走った。「ショックだ」。柿沢氏の名前が「推薦候補」として挙がっていたからだ。

 柿沢氏はこの1カ月、選挙後の自民入りを強く意識して動いた。

 党本部の決定4日前、宴会場に集まった支援者ら約300人を前に、柿沢氏はあるビデオ映像を流した。麻布高校の先輩にあたる谷垣禎一・元自民党総裁による激励メッセージだった。

 みんなの党や民進党など長く野党議員として活動してきた。だが、今月4日の首相指名選挙では「岸田文雄」に投票し、所属した「立憲・無所属」の会派を離脱した。柿沢氏は「自民党の執行部の先生からも前向きな受け止めを頂いた」と説明する。柿沢氏は今回の選挙で当選したら、自民党に入党すると公言する。「ご批判や厳しいご意見も受け止める覚悟だが、一つでも政策を実行できる政治家になりたい」

 柿沢氏からの秋波に対し、自民の地元議員らもこの間、対応を検討していた。ただ、長年にわたり、選挙で対峙(たいじ)してきた柿沢氏への「自民公認」に反対する声が大半を占めた。地元の意向を踏まえ、自民都連は今月、愛知県の選挙区に立候補を予定していた元職の今村洋史氏(59)を擁立する方針を固めた。

 だが、党本部の15日の決定は「公認」とせず、柿沢氏と共に「推薦」だった。党本部は当選した方を追加公認するとみられる。

 「公認してもらえると思っていたのでショックだ。これからどう活動すればいいのか、地元の皆さんと相談したい」。今村氏陣営の関係者はそう話した。

 一方、秋元氏は連日、駅などで通勤客にこう訴える。「私に指摘されていることは事実無根です」

 収賄の罪などに問われ、9月に懲役4年追徴金約758万円の実刑判決を受けた。逮捕後に離党したものの、無罪を主張して控訴し、現在は保釈中の身だ。無所属での立候補となるが、「裁判で無罪という結果を出せれば、当然、復党していく」。

 立憲民主党も対応に追われる。今月12日、元職の井戸まさえ氏(55)を東京15区に擁立することを発表。共産党と調整し野党統一候補となった。ただ井戸氏は元々、東京4区での立候補を予定しており、15区では知名度が高くないのが現状だ。

 陣営関係者は「時間がない」と語る。公示を目前に控え、井戸氏は15日朝、街頭で「15区は汚職の問題も争点だ。利権よりも人権、暮らしを守っていく。政権交代が必要だ」と訴えた。

 ■東京15区 予想顔ぶれ

 今村洋史(59)  無元(1)〈自〉 医療法人理事長

 柿沢未途(50)  無前(4)〈自〉 〈元〉都議

 井戸まさえ(55) 立元(1)    著述業

 金沢結衣(30)  維新       〈元〉グリコ社員

 桜井誠(49)   諸新       日本第一党党首

 秋元司(49)   無前(3)    〈元〉国交副大臣

 猪野隆(56)   無新       〈元〉国税庁職員

 吉田浩司(60)  無新       投資顧問会社

 ※〈 〉内政党は推薦

 ■東京9区 菅原元経産相の問題、尾を引く

 「おはようございます」。14日朝。東京都練馬区の地下鉄駅前で、自民党から立候補予定の安藤高夫氏(62)が行き交う通勤客に頭を下げていた。医師の安藤氏は白衣姿でチラシを配り、浸透を目指すが、自民区議の一人は「地元になじみのない存在」とみる。

 東京9区は元々、練馬区議、都議を経て衆院議員になった菅原一秀元経済産業相の地盤だ。その菅原氏は、選挙区内の有権者や団体に香典や生花を寄付した疑惑で、今年6月に議員辞職。公職選挙法違反(選挙区内での寄付)の罪で略式起訴され、公民権停止3年の略式命令を受け、立候補ができなくなった。東京比例区選出の安藤氏が9区を受け継ぐことが決まったのは9月末だった。

 安藤氏は地元・練馬区の前川燿男(あきお)区長の全面支援を受け、コロナ対策を中心に訴える。

 「自民党、しっかりしろよ」。ある自民関係者は最近、支援者にポスター貼りを依頼すると、そう苦言を呈された。コロナ対応と菅原氏の問題を指摘されたと感じたという。安藤氏陣営の関係者の一人は「いかに菅原氏のイメージを払拭(ふっしょく)して、候補者を刷新したかを伝えられるかが重要だ」。

 「お金にクリーンでなければ」。12日午後、練馬区の私鉄駅前で、立憲民主党の蓮舫代表代行が声をからした。隣に立つのは新顔の山岸一生氏(40)。野党共闘の統一候補として東京9区から立候補を予定する。

 前回17年の衆院選で、希望の党(当時)と共産党が公認候補をそれぞれ擁立。非自民の票は割れ、菅原氏に大差で敗れた。共産は今回も当初、候補者擁立を模索したが、今月中旬、山岸氏への一本化が決まった。

 山岸氏陣営の関係者の一人は「野党共闘が実現できたのは非常に大きい」と歓迎する。ただ、「立憲にどれだけ投票してくれるかは風の影響が大きい」とも語る。今回、その風を感じることはまだないという。

 東京9区では南純氏(38)=日本維新の会=と、小林興起氏(77)=新党やまと=も立候補を予定している。

 ■東京9区 予想顔ぶれ

 安藤高夫(62) 自前(1) 医療法人理事長

 山岸一生(40) 立新    〈元〉朝日新聞記者

 南純(38)   維新    弁護士

 小林興起(77) 諸元(5) 新党やまと代表