(社説)衆院選きょう公示 「1強」が生んだ弊害正す時

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 自公政権の継続か、立憲民主党を中心とした野党勢力への交代か。4年ぶりの衆院選がきょう公示される。

 自民党は「選挙の顔」を不人気の菅前首相から岸田首相に代えて臨むが、政権発足からまだ2週間で、その力量は未知数のままだ。一方の野党は、多くの選挙区で候補者を一本化したが、批判票の受け皿を超えて、政権を託せると認めてもらえるか、課題は多い。

 安倍・菅両政権の9年近く、「1強」といわれた巨大与党体制がもたらした弊害をただし、将来の展望を示せるのはどこか。12日間の選挙戦を経て、有権者の審判が下される。

 ■試される野党の共闘

 きのうは日本記者クラブで、公示前最後となる党首討論会が開かれた。当面のコロナ対策や「成長と分配」のあり方、外交・安全保障政策など、テーマは多岐にわたったが、焦点のひとつが、野党がめざす政権交代が実現した場合の姿である。

 立憲の枝野幸男代表は、首相指名選挙では各党に自らへの投票を呼びかけるが、「政権そのものは単独政権」と言明した。共産、れいわ新選組、社民とは、市民連合の仲介で結んだ共通政策の範囲内に限って、国民民主とはそれぞれが労組の連合と結んだ政策協定に沿って、閣外からの協力を求めるとした。

 日米安保条約の「廃棄」や自衛隊の将来的な「解消」を綱領に掲げる共産との協力への疑問には、党の見解を政権には持ち込まないとの約束があり、緊急時の自衛隊の活動は、枝野内閣の行政権の発動として、責任をもって対応すると強調した。

 それなりに整理はされているが、政策の具体化にあたり、各党間の調整は円滑に進むのか、安定的な政権運営が本当に実現できるのか。有権者の不安を拭えるかは、この選挙戦で、どこまで説得力のある説明ができるかにかかっている。

 与党側にも、違いを埋める努力を求めたい政策がある。例えば、核兵器禁止条約の締約国会議に対し、公明党はオブザーバー参加を主張するが、首相は消極的だ。選択的夫婦別姓の導入やLGBT理解増進法案についても、公明党の山口那津男代表が賛意を示したのに対し、首相は慎重姿勢を崩さなかった。

 ■国会の機能立て直せ

 自公が政権復帰を決めた12年以降の3度の衆院選で、安倍元首相が率いた自民は、いずれも6割を超える議席を獲得する大勝を重ねた。

 この「自民1強」が何をもたらしたか。確かに、頻繁に首相が交代する不安定な政治からは脱却したが、一方で軽んじられたのが国会である。

 集団的自衛権の行使に一部道を開いた安保法制など、意見の割れる法整備を「数の力」で押し通す。憲法の規定に基づいて野党が求めた臨時国会の召集要求をたなざらしにしたり、首相が野党の質問にまともに答えなかったり、説明責任をないがしろにする姿勢は、安倍・菅政権に共通するものだった。

 桜を見る会の前夜祭をめぐっては、安倍元首相が118回にわたって虚偽答弁を重ねていた。国会の行政監視機能を骨抜きにする由々しき事態であるのに、安倍氏はいまだ疑念を解消する説明をしていない。

 長きにわたる「1強」態勢は、政権のおごり、緩みも生んだ。安倍政権の後半以降、森友・加計・桜を見る会など、政治や行政への信頼を失墜させる疑惑が相次いだ。この間、自民党内から政権の行き過ぎに歯止めをかけたり、自浄作用を発揮したりする動きはなかった。与野党を問わず、新しく選ばれる議員には、国会の役割を立て直す重い責任がある。

 ■低投票率でいいのか

 自公政権が過去3回、衆院選で大勝した背景として、1選挙区で1人しか当選できない小選挙区制の特性が指摘される。

 例えば、4年前の衆院選の小選挙区で、自民は議席数の75%を占めたが、得票率では48%と過半数に及ばなかった。ほぼすべての選挙区で候補者が一本化されていた自公側に対し、野党側が乱立し、政権批判票が割れた影響は小さくない。

 与党大勝をもたらした、もう一つの要因は低投票率だろう。

 自民党が政権復帰した12年の投票率は59・32%。民主党政権が誕生した09年より約10ポイント落ち込んだ。その後の14年は52・66%、17年は53・68%と過去最低水準が続く。投票に行かなかった人を含む有権者全体に対する「絶対得票率」をみると、前回小選挙区の自民は25%と、4人に1人が投票したに過ぎない。

 もちろん、棄権した人の中に、消極的なものも含め、与党を支持する人が一定程度いることは否定できない。しかし、一般的には、低投票率は組織力があり、地方議員の数も多い自公に有利とされる。

 2年弱のコロナ禍で、政治の役割が自らの命や暮らしに直結するとの認識を新たにした有権者の行動が変化すれば、選挙結果を左右するかもしれない。

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