(社説)衆院選 経済対策 財政規律も忘れずに

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 かつてこれほど財政規律が論じられない国政選はあっただろうか。財源を棚上げし、経済対策の規模を競い合うような論戦が繰り広げられている。

 主要国で最悪とされてきた日本の財政は、コロナ禍でさらに急速に悪化した。3月末の国の借金残高は1200兆円超。国内総生産の2・3倍にのぼり、戦時中の比率をも上回る。

 コロナ禍で傷んだ暮らしや経済への手当ては必要だろう。だが同時に、各党には収束後を見据えた財政再建の道筋を示すことも求められる。その議論は置き去りにされたままだ。

 自民党は公約に、介護職員や保育士らの処遇改善、脱炭素社会への投資などを盛り込んだ。経済成長による税収増を当て込むが、人口減少が進む日本経済の成長力は弱い。仮に成長率を底上げできたとしても、高齢化で膨らむ社会保障費に加え、経済対策の費用までまかなうことは、現実的ではない。

 公約からは、過去の国政選の際にはあった財政規律を確保する文言が無くなった。高市早苗政調会長は、25年に基礎的財政収支を黒字化する政府の財政再建目標について、「凍結に近い状況が出てくる」とする。

 確かに当面のコロナ対策を借金でまかなうのはやむを得ない。今後の感染動向次第では、目標の先送りを迫られよう。だからといって、コロナ禍とは関係が無い政策まで、財政規律を無視して進めてはならない。

 公明党は、0歳から高校3年生まで、1人あたり一律10万円相当の「未来応援給付」を打ち出した。苦境に陥った子育て世帯を社会が支援する意義は理解できる。ただ、公明党は昨年末、自民党とともに高所得世帯への児童手当の給付廃止を決めたばかりだ。選挙が迫ると一律給付では、整合性がとれない。

 財源論無き政策論議は、野党も同様だ。立憲民主党は、1年間限定で年収1千万円程度まで「所得税ゼロ」にする減税や、少なくとも3~5年間、消費税の5%への引き下げを訴える。消費減税により、社会保障の財源が年15兆円近くも減る。コロナ後の消費喚起策としては、規模や期間が過大ではないか。

 国民民主党も消費減税に加え、全国民への10万円の一律給付など、全額国債を財源にした50兆円の経済対策を掲げる。

 コロナ後の成長の鍵を握るのは、外出自粛で増加した貯蓄が消費に回るのかだ。「将来への不安が、消費の抑制を生み、経済成長の阻害要因となっている」(岸田首相)と言うならば、予算のバラマキは逆効果であろう。景気回復のためにも与野党は、財政再建に正面から向き合うべきだ。

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