(社説)コロナ新方針 細部を固め空白埋めよ

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 政府が新型コロナの次の流行に向けた対策の骨格をまとめた。ウイルスの感染力がこの夏のピーク時の2倍になっても対応できるよう、受け入れられる患者数を2割増やし、病床を確実に稼働できる体制にする。

 甘い想定により、入院できずに自宅などで亡くなる人が相次いだ前政権の失敗を踏まえた内容だ。ただし肉づけはこれからで、選挙前に急ごしらえで作った感は否めない。前提となっている「感染力」があらかじめ想定できる保証もない。リバウンドの兆しを確実にとらえ迅速に手を打つという、感染症対策の基本の徹底こそが肝要だ。

 病床をいくら増やしても、そこで治療にあたる人材を確保できなければ意味がない。法律に定められている権限を活用し、国立病院や公的病院にこれまで以上に役割を担ってもらうというが、コロナ以外の通常医療の継続にも当然配慮しなければならない。現場との密な意思疎通が欠かせない。

 確保している病床数や利用率を、医療機関ごとに公表する方針が示されたのは評価できる。たとえば東京では第5波の際、数字の上では病床に余裕があるのに、自宅に留め置かれる感染者が多く出て、不信を広げた。何が起きていたのかを検証し、実態を今後どうやって「見える化」していくか、細部の検討を急いでもらいたい。

 これまで一部を除いて医療機関の名前が公表されてこなかった背景には、コロナ患者を受け入れていることで風評被害が起きたり、職員が差別・偏見にさらされたりすることへの懸念があった。社会の側もそうした悩みを理解し、適切な協力関係を築いていく必要がある。

 このところ状況は落ち着いているが、ワクチン接種がより進んだ国で感染が拡大している例もある。昨年は10月下旬ごろから北海道や東北地方で感染者が増加した。いつ上向きに転じてもおかしくないという認識をもって、備えを急ぐべきだ。

 自民党総裁選衆院選と、政治の関心がどうしても政局に向いているのが気がかりだ。

 次の波が来た時、どんな状況になれば、どの程度の強さで外出自粛や営業制限などの措置をとるのか、この間、専門家を交えた議論は深まっていない。

 岸田首相が総裁選の公約に掲げた「予約不要の無料検査」の具体像も不明のままだ。検査を容易に受けられる環境を整えるのは大切だが、どこまで税金でまかなうかについては幅広い視点からの議論が必要となる。

 コロナ対策に政治空白は許されない。この当たり前の話を確実に実践することが、いま政府に求められている。