(社説)衆院選 原発政策 10年前を思いだそう

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 日本のエネルギー政策は岐路に立っている。今回の各党の公約は、再生可能エネルギーの導入を進めることでは一致する。異なるのは原発の扱いだが、支持勢力に配慮してか、個別の問題ではあいまいな表現が残る。論戦を通じて各党は姿勢を鮮明にし、数字を掲げた具体策を示して有権者に問うべきだ。

 エネルギー政策に大きな影響を与えたのは、温室効果ガスの削減について菅前首相が昨年、2050年までに実質ゼロを目指す目標を掲げ、法律に明記されたことだ。

 50年に脱炭素社会を実現するため、政府は一昨日、30年度の電源構成を示したエネルギー基本計画閣議決定した。再エネの比率を現行より大幅に高い36~38%とし、主力電源と位置づけ最優先で取り組む。原子力の比率は20~22%に据え置いた。実現には原発27基を高い稼働率で動かす必要があるが、新規制基準の審査や地元の理解が欠かせず、達成は現実的ではない。

 原発維持の理由の一つとして政府はコストの安さを挙げてきたが、根拠は揺らいでいる。経済産業省が8月に示した30年時点の発電コストの試算は、太陽光が原発を下回った。

 原発政策は他にも矛盾を抱える。先月の自民党総裁選では、脱原発を唱えてきた河野太郎氏が、核燃料サイクル政策を「なるべく早く手じまいすべきだ」と明言して論争になった。使用済み燃料から取り出したプルトニウムを発電に使う計画だが、中核を担うはずの高速炉の原型炉「もんじゅ」が頓挫するなど破綻(はたん)している。それなのに歴代の政権は目を背けてきた。

 自民党は今回の公約で、原発の再稼働を進め、持続的に活用するとしたが、新増設や建て替えは明確にしていない。党首討論で問われた岸田総裁は「議論をしっかりして方針を決めていく」と話した。一方で、新しい小型原子炉への投資を積極的に後押しするという。

 立憲民主党は、原子力に依存しない社会を一日も早く実現するとし、新増設は認めない立場だが、公約に再稼働についての記載はない。枝野代表は「安全性が確認されず、地元の合意が得られない原発の稼働は認めない」と述べた。

 エネルギー政策を考えるうえで忘れてはならないのは、東京電力福島第一原発の事故だ。破壊された生活の再建も事故処理も見通しがつかない。最悪の事故を起こしたにもかかわらず、原発の不祥事も相次いでいる。

 10年前、多くの国民が放射能におびえ、節電に努め、電力の将来を真剣に考えたはずだ。投票時には、それを思い起こしてほしい。