(社説)岸田政権、継続へ 真価問われる「丁寧な政治」

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 4年ぶりの衆院選で、自民、公明両党は絶対安定多数を維持し、1カ月前に就任したばかりの岸田首相の続投が決まった。

 有権者の審判は政権の「継続」だったが、自民党は公示前の議席を減らし、金銭授受疑惑を引きずる甘利明幹事長が小選挙区で落選した。首相や与党は重く受け止める必要がある。「1強」体制に歯止めをかけ、政治に緊張感を求める民意の表れとみるべきだ。

 ■「野党共闘」の検証を

 9年近く続いた安倍・菅政治の弊害に正面から向き合い、政治への信頼を回復する。議論する国会を取り戻し、野党との建設的な対話を通じて、直面する内外の諸課題への処方箋(せん)を探る。首相が掲げる「丁寧で寛容な政治」の真価が問われるのは、これからである。

 安倍首相の下で行われた前回の衆院選は、野党第1党だった民進党の分裂で野党系候補が乱立するなか、自民、公明両党が定数の3分の2を上回る313議席を獲得し、大勝した。

 国政選挙で6連勝した安倍長期政権の終焉(しゅうえん)、新型コロナ対応に失敗した菅政権の1年余りでの退場を経た今回、自民党はある程度の減少は織り込み済みだった。しかし、派閥の領袖(りょうしゅう)や閣僚経験者が小選挙区で相次いで落選するなど、不人気の菅首相を直前に交代させ、新しい顔で臨んだにしては、国民の期待を糾合することはできなかった。

 就任したばかりの首相に実績は乏しく、「分配重視」や「新しい資本主義」などの理念も具体性を欠き、有権者は評価し切れなかったのではないか。

 世論調査などで、安倍・菅路線からの転換を求める声が多いなか、森友・加計・桜を見る会といった「負の遺産」の清算に後ろ向きな姿勢も影響しただろう。疑惑についての説明責任から逃げ回った甘利氏の落選は、「政治とカネ」の問題に対する有権者の厳しい評価に違いない。首相に幹事長を辞任する意向を伝えたのは当然だ。

 一方、全国の4分の3の小選挙区で与党候補と1対1の構図をつくりあげた「野党共闘」の効果は限定的だった。立憲民主党の議席は伸びず、枝野幸男代表が訴えた、政権交代につながるような力強さには程遠かった。野党の中ではむしろ、共闘と一線を画した日本維新の会が躍進した。

 立憲は来夏の参院選に向け、共産党などとの協力の効果を選挙区ごとに徹底して検証するとともに、自公に代わる政策の選択肢の肉付けに地道な努力を続けねばならない。

 ■コロナ対策遺漏なく

 首相は近く召集される特別国会での首相指名を受け、第2次内閣を発足させる。

 まずは、この冬にも起こりうるコロナ第6波への備えに万全を期すことだ。すでに病床確保策を中心とした「骨格」は示されているが、いかにも選挙前の急ごしらえだった。人材の手当てを含め、具体策を練り上げる必要がある。

 新規感染者は全国的に大幅に減少しており、観光業や飲食店を支援する「Go To キャンペーン」の再開を求める声も強まろう。感染の再拡大に細心の注意を払いつつ、社会・経済活動の回復をどう進めるか。安倍・菅政権の反省に立ち、幅広い専門家の知見を踏まえた、責任ある政治の判断と国民への丁寧な説明が欠かせない。

 スローガン先行だった首相の理念の具体化も問われる。衆院選の公示直前に設置された「新しい資本主義実現会議」は、「成長と分配の好循環」に向けた実効性のある施策を打ち出せるのか。当面の経済対策にとどまらず、コロナ後も見据えた中長期的なビジョンを示せなければ、看板倒れになるだろう。

 ■「言論の府」立て直せ

 新しく選ばれた465人の衆院議員には、安倍・菅政権下で傷つけられた国会の機能を立て直す重い責任がある。

 憲法の規定に基づく臨時国会の召集要求に応じない。論戦の主舞台となる予算委員会の開催を拒む。質問をはぐらかし、正面から答えない。「虚偽」答弁が判明しても深く反省しない。議論の土台となる公文書を改ざん・廃棄する。過去の国会答弁を無視し、一方的に法解釈を変更する――。

 政府が説明責任を軽んじ、国会の行政監視機能を掘り崩す行為が、何度繰り返されたことか。特定秘密保護法や安保法制など、意見の割れる重要法案を、与党が「数の力」で押し切る場面も少なくなかった。「1強多弱」といわれた与野党の力関係が、政権のおごりや緩みを許すことにもつながった。

 与野党の議席差が縮まった今回の選挙結果を、強引で恣意(しい)的な政権運営の見直しにつなげねばならない。これまで首相官邸に追従し、内部から自浄作用を発揮できなかった与党議員は自らを省み、進んで「言論の府」の再生に尽くすべきだ。

 森友・加計・桜を見る会など一連の疑惑の真相解明も、政権が動かないのなら、国会こそが、その役割を果たすべきだ。

 野党の責任も重い。政権へのチェックのみならず、開かれた政策論争を通じて、多様な民意を政治に反映させる力とならねばならない。