(社説)旅行支援策 感染拡大防止を万全に

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 昨年末から中断している観光支援策「Go To トラベル」事業。長引くコロナ禍で打撃を受けた観光業者には、早期再開を待望する声が根強いが、政府は来年1月中旬までは実施しない方向で調整している。自民党に示した経済対策案でも、「再開に向けた準備を整える」と記載するにとどめた。

 観光業者への支援の必要性は理解できる。ただ、昨秋実施した際には感染拡大と時期が重なったことを忘れてはならない。事業と感染状況の関係については、研究者の間でも見解が分かれるが、コロナ対策は最悪の事態を想定するべきだ。「第6波」の懸念が残る冬場を迎えるなか、年末年始に行うのは難しいのが現実だろう。

 事業の再開までの間も、都道府県が旅行代金の半額(上限5千円)を補助する「県民割」の対象となる旅行先は、隣県に拡大される見通しだ。冬場を乗り切り、医療提供体制の強化や治療薬の普及が進めば、トラベル事業の再開も視野に入ろう。問われるのは万全の感染防止策である。

 政府は、利用者にワクチン接種証明書や検査証明書の提示を求めるなど感染対策を強化するというが、感染拡大の兆候がある場合、速やかに事業を停止することが絶対条件である。

 昨冬は感染が急拡大しているのに、事業の停止が遅れた。同じ失敗を繰り返さぬよう、停止の基準や国と自治体の責任分担をどう考えるのか、事前に説明しておかねば、国民の事業への不信感は払拭(ふっしょく)できない。政府は心すべきだ。

 過度な混雑を生み出さない工夫も欠かせない。政府が検討中の見直し案では、従来は旅行代金の15%(上限6千円)だった宿泊先の地域で使えるクーポンを、「平日3千円、休日1千円」の定額にする。一方、旅行代金の割引率は平日も休日も同じ30%にするという。

 これで需要を平準化する効果が見込めるのか、政府は精査しなければならない。旅行業者とも協力し、平日と休日の間でどの程度の価格差をつければ実効性があるのか、慎重に検討する必要がある。

 日本の有給休暇の消化率は国際的にみて低い。これを機に社員の有給取得が促進されれば、休日に依存する日本の観光業のあり方の転機にもなりうる。

 過度な割引は、事業終了後の旅行需要の反動減という副作用をもたらす。仕事や経済的な事情で旅行できない人の不公平感を高めることにもなろう。

 再開までにはまだ時間がある。政府は、専門家の意見を聞きながら、事業の見直しに知恵を絞ることが求められる。