(社説)伊方原発 安全・安心は万全か

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 不祥事や作業トラブルが相次ぎ、定期検査に伴う停止が異例の長期に及んだ後の運転再開である。安全・安心は万全か、厳しく問われ続ける。

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)を再び動かすと発表した。2019年末に定期検査に入り、当初は翌20年春に運転を再開する予定だったが、1年半以上ずれこんだ。

 今年夏以降、問題となっていたのは、緊張感を著しく欠いた社員の行動だ。重大事故に対応する待機要員1人が宿直勤務中に無断外出し、保安規定に定めた人数を一時満たしていなかったことが7月に発覚した。

 四電は、法令順守に関する教育の徹底や、スマートフォンのGPS機能を使った管理強化などを柱とする再発防止策を決定。有識者からなる愛媛県の専門部会が対策を妥当とし、伊方町と町議会、県議会の委員会が了承したのに続き、中村時広知事も運転再開を認めた。

 昨年1月には、定期検査に伴う作業でトラブルが続出した。核燃料を取り出す準備中、核分裂反応を抑える制御棒1本を誤って引き上げたり、燃料集合体1体が点検装置の枠に乗り上げたりとミスが続いた。外部からの電力供給が止まり、廃炉にする1・2号機も含めた電源の一時喪失という、安全を揺るがす事態にも陥った。

 広島高裁活断層や火山活動への懸念から3号機の運転を差し止めた仮処分決定(その後取り消し)も重なり、定期検査は約半年の中断に追い込まれた。

 こうした経緯があるだけに、住民の不安と不信は小さくない。社員の無断外出問題を受けて、自治体側から「四電は地域の信頼を失った」「原発を運転する資格がないと言われないよう、安全最優先を肝に銘じるべきだ」などと厳しい声が相次いだのも当然だろう。

 自治体も人ごとではない。

 伊方原発は、東西に長く延びた佐田岬半島の付け根にある。事故時には半島の住民の一部が海路で大分県内の市町村に向かう計画で、避難は広域にわたり複雑になる。

 10月中旬には愛媛、大分両県を中心に防災訓練が行われたが、新型コロナの感染拡大への心配から住民の参加は見送られた。コロナ禍前の訓練では、離島の住民が悪天候で計画通りに動けなかったこともある。地震が原発事故とともに津波を引き起こしたり、原発事故と台風などの自然災害が重なったりしても、計画通りに避難できるのか。疑念は解消されていない。

 住民の命と健康を守るために、四電と自治体はそれぞれ重い責任を負う。そのことを忘れてはならない。